家賃の安さが魅力 「駅遠物件」を探すとき気を付けておきたいこと(3/3ページ)
朝倉 継道
2021/06/21
郊外に多い「騒音源」を見逃すな
もうひとつ、これも駅遠物件を探すときはぜひ気を付けたいリスクのひとつだ。それは、駅遠物件では、そばに耐えがたいレベルの恒常的な「騒音源」が存在することがたびたびあるということ。
代表的なものが、工場や流通施設、さらには大型幹線道路などだ。
「いくら駅遠といっても、事故物件でもないのに10部屋あるうち6部屋が空室のアパートって、どういうこと?」
そう怪しんで現場に行ってみると、物件の真裏に建つ工場が、朝から晩まで猛烈な機械音を響かせていたというのは、私がかつて賃貸仲介会社を営んでいた頃に、実際に経験したことだ。
もちろん、駅近は駅近で、建設工事や道路工事の騒音、夜の酔客の声などに悩まされることも多い。が、それは恒常的ではなく、一過性のものであることがほとんどな点が、駅遠物件とのよくある違いだ。
季節を感じながら暮らせる郊外駅遠物件
最後に、ポジティブな話に戻ろう。
駅遠物件も駅近物件も、どちらにも暮らしたことがある私が、実際にもっとも大きく感じた両者の違いといえば、それは季節感となる。
空が広く、緑も豊富な環境にあることが多い駅遠物件では、季節の移り変わりがつねに身近に感じられやすい。
すると「そんな程度のメリットか」と、思う人がいるかもしれないが、ちょっと想いを巡らせてみてほしい。
例えば、春の花々や、夏の空をうずめる入道雲、秋の舞い散る落ち葉を自分は一生のうちあと何回見ることができるのかを考えてみたとき、そのときどきの貴重さ、希少さが、輝かしく感じられてはこないだろうか?
私は、さきほどふれた駅遠物件に3年ほど暮らした際は、地元のコミュニティに飛び込み、冬は週一で「火の用心」の夜回りもさせてもらった。
夜空に星座が輝く下で、ご近所の人たちと共に歩き、熱いお茶で労をねぎらい合った思い出は、多分一生のものだろう。
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。