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負動産の流動化、 資産の海外移転の監視強化、 資産形成には支援――2020年税制改革のポイント(3/4ページ)

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海外不動産の節税対策が無効に

不動産所得の申告では、賃貸収入から償却費など経費を差し引き、不動産所得が赤字になれば給与所得などと相殺することができる。ちょっと前までこの制度と海外の中古賃貸住宅を利用して、所得税の節税をうたい文句にした海外不動産投資のセミナーに人気が集まり、ちょっとした海外不動産投資がブームになっていた。節税方法のスキームは建物の減価償却費を使う手法だ。

日本国内では木造住宅の耐用年数(減価償却の期間)は新築で22年、中古では新築から購入時の年数を指し引いた年数で計算する。築15年の中古木造住宅なら、22年から経過した15年を引いた7年といった具合だ。また、この耐用年数(木造なら22年)を経過した物件では、購入後4年で償却する。

とはいえ、日本での不動産の価値は土地の比率が高く建物の価値は低い。そのため22年を超えたような建物の価値はほとんどなく、減価償却として計上できる経費がないというケースが多い。

しかし、海外の不動産、中でも米国一定地域では土地・建物の不動産価値は建物の比率が高く、古い住宅でも価格が大きく下落することはない。そして古い物件であっても毎年値上がりしており、売却によってキャピタルゲインも得られるものが多い。

これを利用したのがこの節税スキームで、例えば、米国で築25年の建物を1億円で購入すれば、1年間の減価償却費は2500万円になる。賃貸に出せば賃料収入があるが、仮に年間の賃料収入が500万円としても、2000万円は減価償却費として、所得から損失として差し引き、所得税を節税することができる。しかも、この2000万円は4年間計上できる。

つまり、本来は所得税として4年間にわたって徴収されるものが手元に残る。

これは以前から問題視されていた。そこで21年からは海外の中古建物から生じる不動産所得の損失になる減価償却の部分は生じなかったこととされ、この節税方法は使えなくなる。

また、海外資産については、20年12月末時点で5000万円以上の財産を国外に保有している場合は、21年3月15日までに税務署に国外財産調書を提出しなければならなくなった。こうした海外資産に対する税務署の目は厳しくなる見通しで、今後は資産残高だけでなく、預金の利子、不動産の賃料、株の配当・売却益などの入出金記録などの資料の提出が求められた際に提出できなければ、加算税が課されると見られている。

老後の資金作りに税の優遇

人生100年時代といわれる中で、老後の資金作りは大きな課題になっている。また、預金から投資へという流れも日本経済を考えるうえでも求められている。そこでこうした投資促進のための制度の見直しも進められている。

その1つがNISA(少額投資非課税制度)の見直しである。

現行のNISAが導入されたのは2014年のこと。NISA口座では株や投資信託など年間120万円を上限に5年間投資し、そこで得られた利益は非課税になった。この現行NISAは23年で制度が終了するとされていたが、24年以降も延長されることになった。

とはいっても、現行制度のまま延長されるのではなく、制度の一部が見直される。今回の制度の見直しを一言でいってしまうと、現行NISAに、つみたてNISAをセットにした“ハイブリッドNISA”になったと言えるだろう。

現状では、NISAとつみたてNISAのどちらか一方しかできない。しかし、新しいNISAでは現行NISAのような株式投資に年間上限102万円。これに積み立て部分を年間上限20万円が加えられた122万円になるというもの。ただし、株投資部分の105万円は投資商品を自由に選べるが、積み立て部分は、iDecoのラインナップにある投資信託だけになる。投資期間は現行NISA同様の5年間で、投資による利益は、もちろん非課税だ。

ただ、株式だけの投資では年間102万円(5年で510万円)が上限とされるため、現行NISAに比べ、投資額が減額される。なお、現行のジュニアNISAは23年で終了になる。加えて、つみたてNISAも運用期間が延長される。つみたてNISAは18年にスタートして、口座開設期間は37年までで、20年間利益が非課税にされるというものだった。しかし、口座開設期間が42年まで延長され、今年から運用を始めても、しっかりと20年間の利益非課税を受けることになる。

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