負動産の流動化、 資産の海外移転の監視強化、 資産形成には支援――2020年税制改革のポイント(2/4ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/09/09
所有者不明土地の管理強化
前述のような土地の活用、流動化推進のための税制的な優遇を図る一方で、社会問題になっている所有者不明の管理強化の策が「所有者不明土地等に係る固定資産税課税」である。
これまでは所有者不明の土地には、地方自治体による固定資産税の徴収ができないという問題があった。これは固定資産税の納税義務を負うのは、不動産登記に記された所有者になるためだ。
しかし、不動産の登記は義務化されていない。登記するか、しないかは個人の判断次第になる。そのため誰が本当の所有者なのかの特定は難しい。とくに相続が発生した場合、実際に相続したのは誰か、場合によって共有名義になっていることもある。登記には費用がかかることもあるため、登記をしないということも起こってきた。
固定資産税の納税通知は、各地方自治体が登記簿の所有者に送る。しかし、死亡した場合など登記が行われなければ、その不動産を使っている(住居している)人がいても現状では固定資産税を課すことができない。
そこで今回の税改正で自治体が所有者を調査しても分からない場合は、事前に現在の使用者に対して通知したうえで、それを使っている人を所有者と見なして固定資産課税台帳に登録。固定資産税を課すことができることになった。つまり、使用している、あるいは住んでいる人の知らぬ存ぜぬが通用しなくなったというわけである。
ちなみに、不動産の登記義務化については政府内で検討されており、今年の秋には法律化されると見られている。
相続の大きな見直し「配偶者居住権」
2018年、38年ぶりに行われた民法改正に伴って、相続についても大きな見直しが行われた。その中で注目が集まったのは「配偶者居住権」である。
4月からこの配偶者居住権がスタートしたが、今回の税制改正では開始にあたって、配偶者居住権の消滅により対価を得た場合の課税の取り扱いなどが明らかになった。具体的には、配偶者居住権の解除を合意、あるいは放棄することで消滅、配偶者がその消滅等の対価を取得した場合は、譲渡所得として課税されることが明確になった。また、その譲渡所得の計算法も出された。なお、配偶者居住権の消滅を無償で行った場合は、配偶者から所得者への譲渡になり贈与税が課せられる。
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