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老後のライフスタイルで考えてみたい――年金の受け取り年齢の違いでどこまで差が出るか?(2/4ページ)

小川 純小川 純

2021/07/30

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寿命から考える 何歳から受給すれば受給総額がMAXになるか

今回の改正で注目したいのが、受給年齢の75歳までの繰り下げと、「退職時改定」の2点だ。というのも、この選択をどうするかで受け取る年金額が変わってくるからだ。

前に説明したようにこれまでは最長の70歳までの5年間繰り下げることで42%増額された。この繰り下げ期間が10年、75歳までになったことで、84%増額されるようになる。

とはいえ、ここで問題になるのがいくつまで生きられるかということ。亡くなる年齢によっては、受給年齢を繰り下げて1カ月の受給金額を増やしても、受給総額ではマイナスになることもある。

その目安になるのが平均寿命だろう。しかし、ここで気を付けたいのは平均寿命と平均余命に差があるという点だ。平均余命とは、その年齢から亡くなるまでの年数のことで、平均寿命はその年に生まれた「0歳児の平均余命」なので、そこには若干の差が出る。

実際、令和元年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳。しかし、厚生労働省が出している主な年齢の平均余命は下記の表のように平均寿命より長くなる。

主な年齢の平均余命

出典/厚生労働省「令和元年簡易生命表」

これを踏まえたうえで、年金の受給を繰り下げるとどうなるだろうか。

グラフは65歳を0とした、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳のそれぞれの年齢まで生きた場合の年金の受取総額の推移を示している。

令和元年の男性の平均寿命は81.41歳なので、端数を切り捨てて81歳とすると67歳1カ月の196.225倍、月額15万円とすると16万4000円、受給総額ではおよそ2943万円でMAXになり、それ以上繰り下げると逆にマイナスになる。

一方、令和元年の65歳の平均余命は84.70歳で端数を切り捨て84歳でみると、68歳7カ月の240.685倍、月額19万5000円(受給総額は約3610万円)が最大値に。端数を切り上げて85歳にすると、69歳1カ月まで繰り下げた256.513倍、同20万1450円(受給総額は3847万円)がもっとも多くなる。

女性は平均寿命は88.49歳なので、88歳で計算すると、70歳7カ月で307.021倍になり、65歳時の平均余命では89.63歳なので89歳で考えると71歳1カ月まで繰り下げることで受給総額を最大値にすることができる。

たが、グラフからも分かるように75歳まで繰り下げると90歳になっても、受給総額は最大値にならない。75歳まで受給を繰り下げて受給総額で最大値になるのは97歳以降だ。75歳まで繰り下げたときに受給額は月額年金額が15万円とすると27万6000円。97歳時点の受給総額は、約7286万円で、長生きすればするほど受給金額は増えていく。

とはいえ、90歳男性の平均余命は4.41歳、女性でも5.71歳なので、人生100年時代とはいえ男女ともに97歳まで生きるのはハードルが高い。75歳まで繰り下げるのはあまり現実的とはいえない。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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