有料化と手数料の徴収、銀行口座のデジタル化のポイント(3/4ページ)
Kanausha Picks
2021/06/21
複数口座を持つことのデメリット
こうした銀行口座の管理をすることは、現金資産の把握ということもあるが、自分が亡くなった “後始末”において重要なのだ。
死後、その人の銀行口座は凍結され、現金を引き出せなくなる。しかし、19年7月から「預貯金の仮払い制度」が適用され、凍結された預貯金口座でも、死亡時の「預貯金残高×法定相続分×3分の1」、あるいは「150万円」を上限に出金することができるようになった。
この制度は金融機関ごとに適用されるため、預金がいろいろなところに分散されていると、預金額が少ないため、必要な額の預金を引き出せないということにもなりかねない。また、いくつもの口座に分散されていると、それぞれ申請しなくてはならないため手間がかかる。
こうしたことを避けるためにも口座はまとめておくことのほうが、家族にとっては便利なのだ。
口座のデジタル化の落とし穴
自分で管理できる口座を整理した後、大切な注意点がある。それは5年以内の通帳はきちんと保管しておくことだ。
「子どもなど家族が財産を相続しようとした場合、税理士から『亡くなる前の5年間の取引記録』を求められます。これがないと、子どもなど相続人が銀行に連絡して取引の明細を発行してもらうのですが、およそ1口座1万円。5行あれば約5万円かかってしまう。しかも、何度も窓口へ行かなければなりませんし、全て揃うまで2、3カ月かかることもあるので厄介なのです」
と話すのは、とある税理士だ。
繰り越した通帳はつい捨ててしまいがちだが、うっかりすると相続の際に余計な手間や出費、時間がかかってしまうというわけ。相続手続きの時間を短縮するためにも、繰り越した通帳は大切に保管しておきたい。
都市銀行をはじめ、地方銀行もネットバンキングを活用する方向へシフトしている。それならいっそネットだけにして通帳をなくすというのも1つの選択でもある。ただし、それには注意点がある。
ネットバンキングを活用すると「デジタル通帳」へ移行するため、通帳の手数料は発生しない。実際、口座の出入金記録をインターネットで、確認できるので銀行やATMにわざわざ足を運ぶ必要もない。しかも、取引記録は、みずほ銀行が最大10年分、三井住友銀行は最大30年分を見られることになっている。
しかしながら、ネットで見られるのは「デジタル通帳」へ移行した後の取引に関してのみ。それ以前の履歴は、紙の通帳で保管しておくことが必要になる。
この記事を書いた人
記者・ライター集団
政治、経済、ビジネス、マネーなどさまざまなジャンルを取材、執筆活動を行っているフリージャーナリスト、ライター、カメラマンなどによる叶舎LLC.の取材チーム。