家族信託は「将来、○○だったら…」という仮定を含めた相続ができる(2/2ページ)
谷口 亨
2020/04/21
<相談の要点>
・自身が認知症になった場合、また自身が亡くなった場合に妻の生活費、介護費や入所施設の費用と、その支払いを確かにしたい。
・次男が結婚し子どもができたら、次男にも長男同様に資産を渡したい。
・アパート等の不動産は、次男に子どもがいない場合は、長男やその子に継いでもらいたい。
<提案>
・生活や介護の費用は年金。不足分はアパート収入の一部で賄って、残りは貯蓄しておく。預貯金は自宅やアパートの修繕費用として確保。
・終身保険や有価証券は、相続税の支払いに残しておく。
・認知症になっても困らないように長男との間で信託契約を結び、長男に不動産の名義を移し、受託者として管理してもらう。施設に入るなど自宅が不用になったりした場合には、処分してもらう。
・信託契約で、次男が結婚し子どもができたら、不動産の一部を継いでもらうことを定める。
<提案のポイント>
・資産の特性を考えて、使途をあらかじめ考えておきます。
・認知症等のことも考えて、長男との間で信託契約を結び、長男を受託者と決めて財産の管理等をしてもらいます。信託の第2受益者を妻と定めれば、委託者が亡くなっても、妻に生活費を確実に届けることができます。妻が亡くなった後信託終了させ、長男に信託財産を帰属させます。
・相続が争続にならないように、信託契約終了後の信託財産の帰属(相続)方法として、「次男が結婚して子どもができた場合には不動産の一部を次男にも帰属させる」という帰属方法を信託契約に定めておきます。トラブル防止のため、信託契約を結ぶ際には、「なんのために家族信託をするのか」を話し合い、必ず関係者(妻、長男、次男)から了解を得るようにしましょう。
この記事を書いた人
弁護士
一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。