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相続財産は不動産だけ

そのときに遺産分割はどうすればトラブルを回避できるか(2/4ページ)

鬼塚眞子鬼塚眞子

2019/08/26

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さらに事故や病気で親よりも先に急死する子どももいる。そうなると、亡くなった子どもに相続人がいれば、新たな相続人が不動産の相続分を相続することになる。亡くなった人に配偶者や子どもがいれば、さらに相続人の数が多くなり、それらすべての人の同意を得る労力は煩雑になる。

つまり、妻と子どもに法定相続分を相続するのは一見スマートな相続のように思えても、後で複雑になることもあるということは覚えておきたい。
こうした場合に、考えなければならないのは、相続の対象となる不動産に、妻も引き続き、住むかどうかの意思確認を抜きにして語れない。

夫の介護もすることなく夫が先立ち、本人も健康上の問題もない妻の場合、夫と暮らしていた家に住み続けたいという意向を示すことが多い。子どもたちも母親の気持ちを汲んで、母親が亡くなる、あるいは介護が必要になったときにその費用負担のために、改めて不動産問題を考えるという家庭がほとんどだ。こうしたケースでは相続財産が不動産だけで相続人たちも法定相続分を争うことがなければ、妻一人が相続する手続きを取ることで可能になる。

ちなみに、二次相続(妻が亡くなった場合)を考えれば、妻が継続して住むとしても、最初から子どもに名義変更しておくと合理的だ。

しかしこれにも注意が必要で、もともと子ども同士の仲が悪い、兄弟姉妹で親が違う、介護を通して兄弟姉妹の仲が悪くなったなどといった場合は、新たなトラブルの元になる。
世の中には、兄弟姉妹といっても、養子と異母兄弟から構成され、両親が同じ兄弟姉妹は一人もいないという家庭もある。
実際に元々兄弟姉妹の仲が良くなく、一番年長となる養子が「合理的に解決するには、不動産を俺一人の名義に変更する」と主張し、実家の母の面倒を見ていたが、一番下の兄弟姉妹(生物学的には赤の他人)の猛反対に遭い、家裁の調停案件に発展した例もある。

ちなみに、相続税の手続きは被相続人が亡くなったことを相続人が知ってから10か月と決まっているが、法律的な時効はない。20年前に亡くなった親の財産で裁判に発展している例もある。
「お金をかけたくない」「弁護士は敷居が高い」と思う方が多いが、裁判に発展すると時間も労力もお金も非常に費やすことになる。それを回避するためにも、被相続人が元気なうちに遺産分割協議書を作成することはお勧めしたい。

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この記事を書いた人

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長

アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/

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