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日本の不動産市場が外資系ファンドを引きつける理由

浅野夏紀

2020/09/24

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イメージ/©︎paylessimages・123RF

続々と外資系ファンドが日本の不動産市場に流入

新型コロナのパンデミックに、世界経済は未曾有の危機に直面している。その経済対策のため世界各国の中央銀行は、日銀が行ってきた極限までの金融緩和やマイナス金利政策を導入。その結果、世界中で金余りが起こっている。

そうした中で香港からは、大手投資ファンドのPGAを中心に、この先数年間で、1兆円規模の対日不動産投資が行われそうだ。なぜなら、米国の中央銀行の米連邦準備理事会(FRB)は16日、ゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで続けるとアナウンスしたからだ。マネーに対して消費や設備投資という実需が陰る中、世界中のゼロ金利バブルは日米が牽引し、各国の中央銀行が世界の不動産相場を煽りまくる。溢れる一方で行き場のない金が集まる各国のファンドなどを経由してバブルが崩壊するまでドル・円は不動産に向かう。そして、この状態が続けば、日本の不動産市場の勢いは過熱するだろう。

世界の中央銀行が金融緩和に踏み切った理由は経済の安定もあるが、海外からの投資を呼び込まなければ、低迷した経済が盛り上がらないということがある。

経済やマネーがデジタル化し、スマホ1つあれば自国以外の商品にも投資できるようになっていることもあって、新型コロナで経済が低迷している中でも株価は、調整ながらも上昇局面にある。

そして、コロナ後を見据えた次の投資として関心が集まっているのが不動産というわけ。

そんな中で、やはりその動向が注目されるのは中国の動きである。

14億人の人口規模という市場を抱え、今なお高い成長性が期待できる中国だが、中国の土地は基本的には国有で、長期の借地権を売買することはできるが、外国人の所有には制限がある。そのため自国不動産への投資はしづらい。


チャイナマネーが日本に向かってくる可能性も/©︎Iakov Kalinin・123RF

そのうえ中国は米国との貿易戦争に香港問題も加わり、さらに台湾問題までも取りざたされ始め不安要素が増えている。これまで中国は豪州との間で食料や資源の貿易量が多く、チャイナマネーは豪州に流れていた。しかし、米中冷戦と豪州がWHOとは別の独立機関に新型コロナの調査を求めたことで対立。チャイナマネーの豪州の不動産投資は冷え込み、それが日本に向かってくる可能性がある。

アジアの不動産市場で日本がリードする理由

東・東南アジアはどうだろうか。

台湾、香港、タイなど東アジアや東南アジアは、不動産好きな華僑が多く、先行きが不透明なため中国本土に代わる投資先を求めている。

アジアで有力視されている市場としてはシンガポール、マレーシア、韓国、香港あたりだが、ご存じのように香港は自由市場が消滅しつつあり脱落。そのほかのシンガポール、マレーシア、韓国は人口や経済規模で日本より小さく、不動産売買をめぐる制度や法律に未整備な点が多い。そのため整備された不動産の投資環境、流通する物件数が充実している点が日本の不動産市場の強みになる。

このほかにも日本の不動産が注目される理由がある。

各国の不動産市場は、金融政策、騰落率(不動産価格のアップダウン)、不動産業界の慣行、取引の形態、市場参加者の数や質や厚みと国際性、税率などそれぞれ違う。しかも、不動産市場は世界の市場の値動きが一体化した株式市場とは違った動きをするということもある。こうしたう背景から、世界のマネーを握る外形系ファンドやチャイナマネーの目指す先として日本の不動産市場が再注目されているのだ。

再注目される日本の不動産/©︎Sara Winter・123RF

“失われた30年”が日本の買いに転じる

一方、日本はバブル経済崩壊後の長期のデフレ、少子高齢化による日本の製品やサービスの競争力が低下した。社会保障費と消費税を除いた物価水準だけを見ると、バブル経済崩壊以来30年間安いままだ。中国をはじめとしたアジア諸国が経済成長したことで「日本は思っていた以上に物価が安い国」となった。

その結果がコロナ前のアジアからの訪日観光客の増加と「爆買い」だった。爆買いをしたのは何も銀座を訪れた中国人ばかりではない。北海道ニセコあたりのリゾートに訪れた豪州、欧州、アジアの富裕層の観光客もすごかったのである。「不動産も高くはない」と思われれば、外国人に買われておかしくないのだ。

しかも、日銀の超低金利施策とETF購入を通じた株の買い支えもあって、外国人にとっても、世界一金利の安い日本で資金調達して、不動産やリートに投資しても、為替リスク、投資リスクが低い国なのだ。

とはいえ、新型コロナによって各国が超低金利になったことで、日本の低金利の特殊性は薄らいでいる。それでも外資系ファンドにとっては、投資先として、株式、社債、国債、Jリート、投資信託などに自由に分散でき、乗り換えられる日本に投資するメリットは多い。

今では株式などは24時間取引されているが、証券取引所での取引は、「時間差」も利益を上げる要因になる。中でも日本市場は、前日の米国市場(ニューヨーク、ナスダック、S&P)が上がったか下がったかで、後追いの結果となることが多い。つまり、ニューヨーク市場の動向を見ながら投資できるわけだ。これも日本の株取引の5割前後が、外国勢によって取引されていることにも関係がある。

安倍路線の継承と規制緩和、縦割りの打破を掲げて船出した菅内閣。外資系ファンドに日本は“買い”判断をさせたのかもしれない。

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この記事を書いた人

経済アナリスト・作家・不動産小説家

経済アナリスト・作家・不動産小説家。 1963年生まれ。東京都心在住。オフィス・ホテル・商業施設・公有地・借地等の不動産の分析、株など資産市場の分析に詳しい。住宅業界のカリスマ事業家が主人公で、創業者まで徹底的に切り捨てる政権の歴史的な不良債権処理の暗闘局面などを明かした『創業者追放~あるベンチャー経営者の風雲録』などの作品がある。

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