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オルタナティブを持つのは“逃げ”じゃない

週末田舎暮らしが解消する!? 都会の一途な暮らしの生きづらさ(4/5ページ)

馬場未織馬場未織

2017/09/14

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学校だけで生きる子どもたち

一途な方法だけで暮らしを成り立たせていくことには、その逃げ場のなさから追い詰められていくというリスクが伴います。このことについては、昨今さまざまな局面で認識されつつあります。

9月1日は「子どもの自殺が最も多い日」だということをご存知でしょうか。

学校だけしか居場所がないという“一途”な状況は、管理する立場からすると都合がいい。しかしながら、それが当たり前、となった世の中の自覚なき生きづらさは、放っておくことのできないものだと思われます。

9月1日の子どもの自殺は、どれだけ不自由な環境を子どもたちは生きているというのかということの証左にほかなりません。

授業が終わったらそのまま、その建物のなかで部活。

管理する側は楽ですよね、家にいなければ学校、チェックがシンプルです。

ただ、1日のうち学校に10時間以上いる子どもは、残りの14時間で他の居場所をつくることなんてできません。大多数の生徒がそうしているなかで、「わたしは、ほかに居場所があるから」と言えるような強い子はきっとそもそも悩むことなどないでしょう。

でも、人生のほとんどを一緒に生きる友達のなかで、同調圧力に押しつぶされそうになっている子はきっと、その環境から出ることより、そのなかで生き抜くことしか考えられないのではないかと思います。

ひとところにいなければならない環境は、うまくいかなくなった途端に過酷です。

うまくいっているとしても、学校という場所に一途な子どもたちはほとんど社会生活をしていませんから、「将来どんな仕事がしたいか」なんてそうそう思いつきはしませんよね。実感も経験もないわけだから。それなのに、「目標を持て」だなんて言われちゃってね。

うちの息子が、「水泳のコーチか釣り師になりたい」というのもまあわかります。それしかやってませんから!

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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