【京都で愉しむセカンドライフ】昔も今も変わらない祇園祭での「蘇民将来之子孫也」という言葉に託された思い(2/2ページ)
奥村 彰太郎
2021/07/28
古から今に伝わる疫病災厄除けの強い思い
20年、八坂神社本殿は国宝に指定された。文化庁ホームページには、「八坂神社は、京都市街の中心部、四条通の東端に位置する。疫病退散を祈願する祇園信仰の総本社で、現在の本殿は徳川家綱(第4代将軍)による承応3年(1654年)の建立になり、平安時代の建築の空間構成を伝え、中世の信仰儀礼と建物の関係をよく示す。
この本殿が、江戸時代前期に建立されたことは我が国建築史上、高い価値を有しており、現在まで祇園祭を担う人々によって維持されてきたことは、深い文化的意義が認められる」と記載されている。
国宝 八坂神社本殿
祇園祭では八坂神社や各山鉾の会所で「ちまき(粽)」が売られている。初めて「ちまき」を見たときは食べ物と勘違いしたが、家の門口に吊るす疫病災難除けのお守りだ。京都では祇園祭のときに毎年新しい「ちまき」に替える風習がある。「ちまき」には「蘇民将来之子孫也(そみんしょうらいのしそんなり)」という文言が書かれている。
厄除ちまき
これは、八坂神社のホームページによると、「八坂神社御祭神、スサノヲノミコト(素戔嗚尊)が南海に旅をされたとき、一夜の宿を請うたスサノヲノミコトを、蘇民将来は粟で作った食事で厚くもてなしました。蘇民将来の真心を喜ばれたスサノヲノミコトは、疫病流行の際、『蘇民将来子孫也』と記した護符を持つ者は、疫病より免れしめると約束されました」という故事にちなみ、現在でも伝承されている。
八坂神社の西門を入ると正面に「蘇民将来」をお祀りする「疫神社」がある。鳥居には「茅の輪」が設けられ、「蘇民将来子孫也」と唱えて茅の輪をくぐり、疫病退散・無病息災を祈る。例年は祇園祭の最終日7月31日に疫神社の夏越祭で茅の輪が設けられるが、コロナ禍の現在は茅の輪が常時設置されていて、収束を願う参拝客が後を絶たない。
蘇民将来を祀る疫神社
現代では神頼みだけでなくワクチンの普及で、元の生活に戻れる日も近い。22年こそは祇園祭の山鉾巡行や神輿渡御が復活してくれることを期待したい。
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この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラー
1953年東京生まれ、東京都立大学卒業、株式会社リクルートに入社。進学や住宅の情報誌の営業や企画・人事・総務などの管理職を務め、1995年マネー情報誌『あるじゃん』を創刊。発行人を務めた後、2004 年 ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラーの資格を活かし、“キャリアとお金”のアドバイザーとして独立。企業研修の講師や個別相談を中心に活動中。大学の非常勤講師も務める。東京と京都のデュアルライフを実践中。