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継続は力なりと言うけれど、ルーティーンはなぜ三日坊主になってしまうのか(2/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2021/07/22

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飽きっぽくてマンネリに耐えられない人の脳みそ

ルーティーンと聞くと、どうも人は「毎日やらなければならないこと」「欠いてはならないこと」「同じ動作を繰り返さなければならないこと」と受けとってしまうようだ。

そして、そういう人の多くは、一日30回毎日必ず腹筋をして3カ月で5キロやせるというように、短期間でのかなり高い目標設定をするため、三日ほどで息切れを起こし、自己嫌悪に陥るはめになる。

近年、メディアでトップアスリートや成功した実業家が実行している「ルーティーン」が紹介されて、「習慣化」しさえすれば効率的に結果が出るぞと言っては、視聴者の耳目を集めたりしている。このように造られた「ルーティーン」のイメージも影響しているのではないかと思うが、全ての人が、アスリートと同じようなトレーニングができるわけがないし、その必要はない。
 
乱暴な言い方をすれば、脳内のネットワークが十分張り巡らされるまで、続けることに注力すればよいのだ。ついでに言うなら、脳みそは飽きっぽい。マンネリ化した行動は、すぐに嫌気がさしてくる。

三日やって四日目にやらなかったから、もう俺はダメだと思って諦めるのではなく、四日目は休暇だったからと思えば五日目はまた取り組む気も起きるというものだ。また、決まりきったメニューを消化することに拘泥するのもよくない。

長期的に継続するためには、脳を飽きさせず、苦痛を極力減らすように考えたほうがいい。途中でさぼってもいいし、目先を変えてメニューを変化させたほうがいいのである。むろん、だからといって、簡単にできるとは言わない。変化にはある程度の負荷が必要だからだ。

よくある、「こうすれば簡単に〇〇できる」とか、「〇〇すれば誰でも〇日で××できる!」という文言を文字通りに信じない方がいい。

これは定番の殺し文句であって、ほとんどの場合、単に販促の手段であるにすぎない。何某かの目的を達成したいのであれば、結局のところそれなりの負荷をかけ、労力と時間を割かねばならないということは念頭に置いておくのがいいだろう。

もしあなたが、地道にコツコツ、少しずつ(たまにサボったり、ちょっと目先を変えたりをしたとしても)を続けているものがあるとしたら、変化がある日突然起こるだろう。ここまでくればしめたもので、それはすでにあなたの生活の一部になっている。

千里の道も一歩からと言うが、別に不眠不休で千里を歩き通せとは書いていないし、寄り道したって法に触れるわけでない。誠に逆説的であるが、継続するためには真面目にやってはいけないのだ。 

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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