人生100年時代 日本中を"渡り鳥"のように暮らす生き方 〜自分の知らない地域に触れて、はじめての自分に出会う〜(2/3ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/04/26
地方が持つ問題も解決
長年にわたって地方は、東京や大阪などの都心部に人を供給してきた。ところが都会に行った若者たちは地方に戻ることはなく、そのまま定住してしまう。どの地方に行ってもだいたい事情は同じだと牧野さんは言う。
「そこでさまざまな自治体が掲げるのが『移住・定住の促進』、つまり、人を呼び戻そうという取り組みです。地方は、自然が豊かで食べ物がおいしいと宣伝をするのですが、この理由だけで移住・定住政策で大きな成果をあげているところはほとんどありません。一旦は移住しても、数年で帰ってしまう事例が後を絶たないのが現状です」
定住させようとするから無理が生じるのかもしれない。牧野さんは、人がいなくなってしまった地方で感じたことがあると言う。それがwataridoriの着想を得るきっかけにもなる。
「全国各地で仕事をしていると素晴らしい仕様の豪邸や、絵になるような素敵な家に巡り合うことがあります。東京ならば何億円もすると思われるような家が、地方ではざらに目にすることができる。そして驚かされるのは、こうした家があまり使われていないということ。先祖伝来の家だから売ることはできない、人に貸すにもマーケットもない。管理は結構面倒で特に草木の剪定や通風の確保、家の中の掃除などで悩んでいるというオーナーも数多くいます。取り残された家は自らの役割を探して彷徨っているのです」
役割を探しながら彷徨い続けている地方の空き家……ここに命を吹き込んだのが渡り鳥ハウスなのだ。しかし、こういった物件はどのように集めているのだろうか。
「さまざまなかたちで紹介されることが多いです。お話をいただくと、まずは私たちが物件を見に伺います。1棟1棟、実際にこの目で確認し、地域・自治体と一緒にどのように運営していくかを考えるのです。もちろん直接オーナーさんからご連絡いただくこともあります」
渡り鳥生活の醍醐味
wataridoriが提供するのは住まいだけではない。
「今はコロナ禍で少なくなってしまっていますが、どこの地域でもイベントが行われます。マラソンや花火はその代表的な事例ですが、こうしたイベントの企画・手伝いや各方面への手配・進行なども人材が足りていません。wataridoriの会員さんがお手伝いをしたうえでイベント当日はランナーとして参加する、特等席で花火を見る。そしてイベントが終わった後に、街の人たちと一緒に酌み交わす美酒。これまでの観光や旅行では決して味わうことのできない体験をすることができます。
そしてwataridoriの生活メニューには、さまざまな地域での『働き』や『学び』もあり、これまでの旅行や観光では味わえない多くの機会が提供されます。
例えば、日本には素晴らしい日本酒を造る酒蔵が多数ありますよね。ところが酒の仕込みにあたっては、全く人手が足りていないそうです。wataridoriの会員さんが仕込み期間中酒蔵のお手伝いをし、新酒の季節に再びやってきて仕込んだ酒を地元の仲間と味わうということも計画しています。ほかにも、みかんやりんごの収穫をお手伝いいただきたい農家さんはたくさんいます。一緒に収穫して獲れたての果実を頬張ってみませんか。単なる観光果実園では味わえない地元農家さんとの交流もwataridoriならではの醍醐味であり、 “その地で生活する”ということなのです」
さまざまな地域で「働き」や「学び」を味わえる/画像提供 全国渡り鳥生活倶楽部
この記事を書いた人
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