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まちと住まいの空間 第29回 「ブラタモリ的」東京街歩き⑥――新しい街歩きの楽しさを発見できる銀座~丸の内(4/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2020/10/27

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晴海通りを通して太古の風景へ

超高層ビルが林立する現代東京に残り続ける「微地形」は、銀座と丸の内が融合することで、10年以上前の番組だが新鮮な気持ちで見直せる。単なる番組のリプレイではく、新たな見え方として、ブラタモリという番組を進化させられる。

日比谷入江だった日比谷公園内では、心字池が歴史の記憶を呼び覚ます。


太古まで遡れる日比谷公園内の心字池の水面

この池の窪みは氷河期が原型。内海(現・東京湾)から外海(太平洋)に出る浦賀水道あたりまで陸化し、古東京川に流れ込む旧平川が削り取ったものだ。海面下となる縄文後期の海進を経て、川としての形状が再び浮かび上がる。

江戸時代にはその川の痕跡を活かして掘割とした。その掘割が明治36(1903)年に近代公園となり、日比谷公園内の池として水面が残り続ける。このようなプロセスを番組ではCGで再現した。

銀座と丸の内(日比谷といったほうがよいのだが)を結ぶ晴海通りは、1940年に開催が予定されていた万国博覧会の主会場となる埋立地の晴海と都心を結ぶ新たな都市軸として広幅員の道路が整備された。


1940年万国博覧会と晴海通り

昭和初期の新しい道路である。今でも、晴海通りの幅は広すぎ、あまり歩く気にはならない。晴海から銀座を東西に縦断して日比谷公園まで歩こうと思いつく人はあまりいない。これが最高の街歩きだと自覚する人もまずいない。

ただし、面白いかどうかの判断は、頭で考えて選別してしまうとうまく理解できないものだ。都市空間の面白さを感じるには体験が近道。新鮮な気持ちで、一度銀座四丁目交差点から日比谷公園まで、微地形を体感しながら晴海通りを歩いてみたらいかがか。さわやかな空気が視界の先に漂い、街歩きの楽しい1ページとなる。その時、これまでの固定観念が打こわされる。 

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「ブラタモリ的」東京街歩き④――坂の「キワ」を歩く「本郷台地」
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「ブラタモリ的」東京街歩き⑥――新しい街歩きの楽しさを発見できる銀座~丸の内

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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