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まちと住まいの空間 第29回 「ブラタモリ的」東京街歩き⑥――新しい街歩きの楽しさを発見できる銀座~丸の内(3/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2020/10/27

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晴海通りが繋ぐ江戸前島と日比谷入江

「ブラタモリ銀座編」では、銀座通りと晴海通りが交差する銀座四丁目交差点に立つ。銀座通りが微高地であり、江戸前島の尾根に通された話を展開。


京橋にあるイナックスビル上層階から見た銀座通り(手前が銀座一丁目)

微地形(5万分の1や2万5000分の1縮尺の地形図上で明明確にはわからない微細な起伏をもつ地形)から銀座を捉えた視点は、これまでになかった。銀座は高低差があり、平らじゃないと知ったタモリさん、俄然「やる気」のアドレナリンが満ちてくる。

まずは銀座四丁目交差点から築地方面が低くなっていることを確認。次に数寄屋橋交差点付近から、低い日比谷公園方面を確かめる。


数寄屋橋交差点から見た日比谷公園方向に僅かに下る晴海通り

ここですかさず久保田アナウンサー、「銀座に高低差があることはわかったのですが。ここは、喜ぶべきところなのでしょうか」とタモリさんに再び強烈なボケ。これは、天然なのか、才能なのか。あるいは、単に一般視聴者を代弁したに過ぎないのか。絶妙過ぎてよくわからない。

タモリさんは「当然!」と切り返し、高低差を肌で感じ、喜びを満面に浮かべる。日比谷公園に通じる坂道を「前島坂」と命名。ただこの坂名、現在通用する名かどうかはよくわからない。もう死語になっているかもしれない。それはともかく、銀座(銀座四丁目交差点の尾根)と丸の内(日比谷公園内の窪地)が坂道(晴海通り)で結ばれていたことをそれぞれの思いで実感する。

微地形にこだわれば、銀座と丸の内を同時に語る違和感はない。美空ひばりの「川の流れのように」がバックに流れ、地形の低い日比谷交差点近くでタモリさんが一言。「人は低いところへ低いところへ流れて行くものですよ」と、桜田門外の変で井伊直弼を切った水戸浪士が傷つきながら逃げる行動パターンを分析。

歴史をさらに遡り、徳川家康が江戸に入府する以前の原風景に。晴海通りの連続断面をイメージすると、微高地の銀座と入海の丸の内、自然がつくりだした微地形の風景として一体化する。


徳川家康入府以前の現地形と寛永後期の比較

「ブラタモリ」だからこそ、テンションが上がる題材として意味を持つ。

次ページ ▶︎ | 晴海通りを通して太古の風景へ

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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