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まちと住まいの空間 第29回 「ブラタモリ的」東京街歩き⑥――新しい街歩きの楽しさを発見できる銀座~丸の内(2/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2020/10/27

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丸の内でのアクシデント

ここまでの文章を少し補足すると、2009年秋に三菱一号館美術館の建物が竣工し、その竣工展覧会が翌年の春まで開催されていた。


三菱一号館竣工展覧会での展示の様子

私は、竣工を記念した展覧会と三菱一号館美術館1階に設ける資料館、この両方の監修を任された。3年をかけた準備を経て、丸の内に対する思いがまさに頂点に達していた時期だった。

携帯電話の先では、三菱地所のO氏から「最大限対応します!」との力強い言葉が得られた。目の前にいるディレクターも番組編成会議(実際どのように呼ばれていたかはわからない)に持ち込まなくてはならない状況へ。今にして思えば、自身のやり過ぎを現在大いに反省している。ただ一方で、私の勢いがなければ「ブラタモリ丸の内編」は成立しなかったとの思いも強い。

丸の内編の放送が終わった後、ディレクターと「ブラタモリ丸の内編」について話す機会があった。「丸の内の制約条件の厳しさが想像をはるかに超えていました」と、撮影時のコメントが返ってきた。強引にねじ込んだことから、このコラムでも銀座と丸の内を融合させた微地形の話ができる。

「ブラタモリ丸の内編」の撮影ではアクシデントが起きた。

それは、馬場先通りの中央分離帯から、皇居方面を見た明治後期の絵はがきと、目の前に見える馬場先通りの風景とを重ね、「一丁倫敦(ロンドン)」になるプロセスを私が語っている最中だった。


皇居の方面を望む明治後期の馬場先通りの街並み

3人のうしろで「ガチャン!」と大きな音。撮影許可は取っていたものの、不意を突かれて大いに慌てた。集音の担当者をはじめスタッフの人たちは、そのシーンのやり直しを考えていたと思う。

別方向からは、時間をおかずに「そこで何やってんだ!!」とパトカーの拡声器から大きな声。何が起きたのか把握できないまま、馬場先通りでの撮影は中止。そそくさと三菱一号館美術館1階にあるカフェに入り込む。カフェでもじっくりと話が展開する予定だったが、タモリさんともども落ち着きなく話を切り上げてその場を退散。その時、久保田祐佳アナウンサーの「お茶はしないんですかね?」との現状を超越したボケに一同ほっとする。

この話を聞けば、馬場先通りの路上からカフェまでのぎくしゃくとした流れに思いあたる人もいるかもしれない。もう一度「ブラタモリ丸の内編」を視聴する機会があれば、要確認のシーンとして推奨したい。

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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