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BOOK Review――この1冊 『不動産投資と火災保険』 薮井馨博 著(1/2ページ)

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火災保険という観点から、投資物件の抱えるリスクや収益性を見直すというテーマが新鮮だ。著者は、九州地区の投資物件の火災保険を専門に取り扱う、保険代理店の経営者。著者は自らの経験に基づき、多くのオーナーが、火災保険料を「諸費用の一部」としか認識しておらず、そのことが物件が火災や災害に遭った時、保険金による経済的解決を阻む要因になっていると指摘する。

例えば、火災保険の基本補償の内容と、特約・オプションの内容を把握しているオーナーはどれくらいいるだろうか。火災/落雷/破裂/爆発と、台風、突風、竜巻、防風等による被害を指す風災/雹災/雪災は、基本補償でカバーできる。それ以外の、水災や水濡れ、盗難、不足かつ突発的な事故による被害等への補償は、特約・オプションだ。著者の経営する保険代理店で、最も保険金請求の件数が多いのは、特約・オプションの「不足かつ突発的な事故」で、全体の約4割を占める。「不足かつ突発的な事故」には、知らない間に物件の外壁や敷地内のポールを車でぶつけられていた、スプレーで物件に落書きをされていた……等の被害が該当するが、保険料を抑えようと、補償を外しているオーナーも多いという。その場合は当然、保険料は下りない。

保険は「転ばぬ先の杖」のようなものでもあるから、何事もなく投資物件を運用できている時には、ありがたみを実感しづらいものだ。しかし、例えば先日の台風19号により、武蔵小杉のタワーマンションが停電するといった不測の事態は、いつ起きるとも限らない。本書を読むと、物件の築年数や構造、修繕履歴までチェックしたうえで、過不足なく必要な補償内容をカバーできる保険を精査して加入するくらいの慎重さが必要だと痛感する。

なぜ、火災保険の加入に際して物件の築年数や構造、修繕履歴をチェックする必要があるかといえば、火災保険は基本的に、燃えにくい順で保険料が安くなるからだ。例えば木造の中古物件と、RC造の新築物件とでは、後者の方が火災を含むリスクに見舞われる確率が低くなるため、保険料は安く抑えられる。ここまでは、多くの読者が納得するところだろう。著者はそれに加えて、現場で得た教訓として、日ごろのメンテナンスと、それを記録した修繕履歴の必要性を指摘する。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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