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空間と心のディペンデンシー

念願のマイホーム購入からはじまる夫婦すれ違い(2/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2019/08/30

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よくよく考えると見えてくる不満の原因

言いたいことは星の数ほどあったが、業者をこれ以上待たせるわけにもいかなかったで、一部旦那の好きにさせた、そうだ。

最近になって、旦那が割り当ての家事を怠るようになり、我慢ができなくなってきたという。白い壁紙や陶器は、すぐに汚れるのに、旦那は掃除をしない。あろうことか、彼女のお気に入りのダイニングテーブルにパンくずをまき散らし、そのままにしておいて平気な顔をしているのだ。こんなことなら、全部私が決めればよかった。「どうせ管理するのは私なのに!」と。

まったくもって耳が痛い。なぜなら私も妻にそのような小言を始終聞かされているのだから。立場上、旦那側の弁護に回りたかったが、ぐっとこらえた。こういう時の女性は、大抵、愚痴を聞いてほしいだけである。したり顔で余計なアドバイスは無駄どころか大いに害であるから、ひたすら聞き役に徹するのが正しい。世の男性諸君は、口答え等するから、問題が大きくなるのだと言っておきたい。そして、最後に、あなたは正しい、その考えはもっともであるというようなことを言葉に出してやれば、最善である。

閑話休題。

さて、彼女は今までの不満を一気に吐き出した後、「すみません。こんなこと聞いてもらって。誰かに聞いてもらいたかったんです」と言った。もちろん、私は、気にしなくてもいいと言ったが、別れ際に「壁紙が白いのは気にしなくて良い。いずれ、焼けて茶色くなるんだから」と付け加えたのは、蛇足だった。

こういった諍いは、よくあることだ。好きで結婚したとしても、もともと違う人間なのだから、まったく同じというわけにはいかない。結婚とは、異なる文化の融合であるから、ある程度の衝突は免れないし、長年染みついた習慣や好みはそう簡単に相手に合わせられる物でもない。妥協と衝突を繰り返しながら、えっちらおっちらやっているうちに、ある日、気がつくのだ。白い壁紙が茶色になってゆくように夫婦は調和してゆくものだということを。

 

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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