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賃貸経営のロジック――“不動産投資家”ではない。“賃貸経営者”としての視点を徹底する(1/3ページ)

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取材・文/財部 寛子 撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

4年もの歳月をかけ、徹底的に物件や不動産会社の調査を行い賃貸経営に乗り出したというのが、東京、福岡、京都に4棟64室を所有する海野真也さんだ。元銀行員で、経営が悪化している地主大家への融資を経験したこともあり、融資する側、経営する側の両方の視点を持つ。賃貸経営を“不動産投資”だと考えるオーナーも少なくないが、海野さんは“投資”という目線は完全に捨てている。海野さんが賃貸経営を始めるまでの動き、物件購入の考え方、物件購入後の経営方法などを聞くと、賃貸経営の基本的な視点を改めて考えさせられるのではないだろうか。

徹底した調査で賃貸経営をスタート

――⼤学卒業後に地⽅銀⾏に⼊⾏し、その後、⼤⼿⽣命保険系資産運⽤会社での勤務を経て、現在は賃貸経営を専業とされています。賃貸経営を始めるきっかけにどんなことがあったのでしょうか。

銀⾏から運⽤会社に転職したのが2005年です。その年は、転職以外にも⻑⼥の誕⽣、マイホームの購⼊など、⼤きな出来事がありました。運⽤会社に転職したことで給料は上がりましたが、その⼀⽅で、いつどうなるか分からないとても厳しい業界だとも感じました。⾃分⾃⾝に何か起きたとき、家族を露頭に迷わせるわけにはいかない。そんなことを考えていたときに、銀⾏員時代に担当していた地主さんのことが頭をよぎりました。


海野 真也(うんの しんや)/1973年⽣まれ、静岡県出⾝。中央⼤学法学部卒業。98年静岡銀⾏に⼊⾏、2005年⼤⼿⽣命保険系運⽤会社に転職。転職と同年、⻑⼥の誕⽣、マイホームの購⼊などがきっかけとなり、賃貸経営を視野に⼊れる。10年3⽉に1棟⽬となる物件を福岡県福岡市博多区に購⼊。その後、10年7⽉に東京都北区、13年3⽉東京都⽇野市、13年3⽉京都市⼭科区に購⼊。14年から賃貸経営を専業に。現在、4棟64室の⼊居率は96%(62⼾/64 ⼾)。

――どんな出来事があったのでしょうか。

私がまだ新⼊⾏員のときの話です。賃貸経営状況が極めて厳しい地主⼤家さんで、その⼤家さんに融資するための稟議書を作成したのですが、⼊居率が低く経営の⽴て直しに時間がかかる案件でした。社会のことも不動産のこともまだ分かっていなかった私でしたが、仲介会社に⾏き、「この物件に客付けしてください」と⼀⽣懸命お願いして、⼊居者を⾒つけてもらいました。仲介会社からは「銀⾏員で客付けに来たのはあなたが初めてですよ」ということも⾔われましたね。しかし、新⼊⾏員でもそれくらい⼀⽣懸命やれば部屋を埋められる、もっといえば、賃貸経営は特殊な能⼒がなくても努⼒すればやれる業界なのではないかと思ったのです。

――そのときの経験を賃貸経営に生かしたわけですね。

はい。それからさまざまな書籍を読み漁りました。出張のついでに地⽅の⼟地、物件、不動産会社なども調べて回りました。その数、物件は約4万件、不動産会社も約2000社に上ります。

――相当な準備をされたんですね。最初の物件はいつ購⼊しましたか。

10年3⽉に福岡県福岡市博多区の物件を購⼊しました。RC造、10⼾の物件です。

――何を基準にその物件を購⼊したのでしょうか。

物件の場所については、おカネやヒト、モノが集中的に増加していく⼈⼝集積地帯、つまり太平洋ベルト地帯に絞りました。もちろん、賃貸需要が少ないエリアは外しています。さらに、そこから災害リスクが⾼いところを外していきました。私⾃⾝が静岡県出⾝なので、とくに地震と津波に関しては感度が⾼いんです。地形などを調べた結果、福岡県が津波のリスクが⽐較的低いことが分かりました。物件に関しては、バブル期に建築された建物に⽬をつけています。その頃の物件は、無駄に⾼品質にできていますからね(笑)。

――海野さんはかなり安く物件を購⼊しているそうですね。

私が賃貸経営について調べ始めたのが05年。実際に購⼊に⾄ったのは10年ですが、08年から購⼊しようと動いていました。さきほどもお伝えしましたが、そのあしかけ4年の間にとにかく多くの物件を⾒て、多くの不動産会社と接触しました。そういったなかで、地場の不動産屋さんなどから未公開の情報がたまたま⼊ってくることがあるんです。例えば、現在の⼤家さんが別の事業に失敗して、安くていいからとにかく早く売ってしまいたい、というようなパターンです。現在、東京都⽇野市、東京都北区、京都府京都市⼭科区、福岡県福岡市博多区に物件を所有していますが、どの物件も破格で購⼊し、福岡県と東京都北区の物件の現在の表⾯利回りは20%を超えています。

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