共用部分のタバコの投げ捨ては「割れ窓」と同じ? 犯罪機会論で賃貸経営を斬る(4/4ページ)
朝倉 継道
2021/09/28
レベルアップすべきは「物件の属性」
以上のように、犯罪機会論の論理と実践における大きな柱となっている割れ窓理論とホットスポット・パトロールを見ると、これらは「いつも物件の玄関を掃除しているオーナーさん」と、その本質が大変よく似ている。
彼らは、物件に“割れ窓”があれば、これを素早く発見し、速やかに修復できる態勢をつねに維持している。なおかつ、ホットスポット・パトロールに精励精勤しているような存在であるともいえるだろう。
その多くが順調な賃貸経営を続けていることについての、これらは大きな理由であると見ていいはずだ。
ちなみに、オーナーの口からたまに聴かれる言葉として、「属性」というものがある。
あまり耳触りのよい言葉とはいえないもので、要は客である入居者への選別的な評価を指す。例えばこんな風に使われる。
「家賃を下げたら、属性の低い入居者が集まるようになって、クレームと滞納が増えた」
しかしながら、述べたように賃貸住宅の入居者における素行や生活マナーといった面での問題については、必ずしも当人の資質ばかりでなく、物件の管理状況に影響されることも多い。
すなわち、犯罪機会論に学べば、オーナーの経営姿勢も含めた物件自体の属性もまた、これをレベルアップすることこそが、ネガティブな事象の発生を抑える大きな力となる。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。