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共用部分のタバコの投げ捨ては「割れ窓」と同じ? 犯罪機会論で賃貸経営を斬る(3/4ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/09/28

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割れ窓理論とホットスポット・パトロール

犯罪機会論的な考え方が、賃貸住宅経営にとってよいヒントとなる理由は、賃貸住宅という場において、犯罪機会論の柱となっている理論が、まさに恰好のものとなるからだ。

具体的に挙げると、冒頭にも触れた「割れ窓理論」、さらに「ホットスポット・パトロール」と呼ばれる手法および考え方が、賃貸経営にとって特に大きなプラスとなる。

そのひとつ、割れ窓理論についてはよく知られている。これは、「割れたまま放って置かれている窓」という小さな破壊が、周囲の人々をして公共と秩序を損じることに対する罪悪感を衰えさせ、やがて、その周りに犯罪がはびこっていく状態を指す。

そこで、私が賃貸住宅で見てきた範囲にこれをあてはめると、例えば、共用部分でのタバコの吸い殻の投げ捨てが見られた物件では、その後、必ず家賃の滞納や、深刻な入居者間トラブルが発生している。

すなわち、ここでの捨てられたタバコは、割れた窓同様、「この場所では秩序に従う必要がない」ことを示すよくないサインとなっている。

そのため、これを見た人物が、もともと秩序に従うのが苦手な人物であった場合、彼らの中では往々にして自律のタガが外れてしまう。

ダラダラと家賃を遅らせたり、周りの迷惑を考えず好きにテレビのボリュームを上げたり、タバコや紙屑を自らも廊下や玄関に投げ捨てたりといった方向に、転がってしまうことになる。

よって、割れ窓も、タバコの吸い殻も、いずれも初期における問題の排除こそが何より肝心となる。まだ1本目のうちに、捨てられたタバコを素早く取り除けるような管理体制が、賃貸住宅ではつねに重要なこととなる。

一方、ホットスポット・パトロールは、防犯上重要な地点=ホットスポットにおけるパトロール要員の「滞在」を重視した手法となる。

通常のパトロールでは、要員が一定またはランダムなコースを立ち止まらずに移動していくことが多い。その過程で、不審者や不審な現場を発見することが、基本的な目的となっている。

対して、ホットスポット・パトロールでは、パトロール要員は、コースのうちいくつか一定の箇所にとどまり、一定時間その姿を人々の目に晒し続ける。そのことで、犯罪への監視体制がその場所に存在することを示威的に周囲に知らしめる。

すなわち、そこを行き交う人々の間に隠れ、潜んでいる犯罪者に対し、対抗力を示すことで、犯行の難しさと不利益を認識させることが要点となるかたちだ。

これは、賃貸経営にあてはめると、なんのことはない。成功しているオーナーによく見られる「毎日の物件掃除」と、まったく効果の重なる行動といえるだろう。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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