「昭和の大家」から学ぶ——いまどきオーナーが見逃しやすい入居者募集のキホン(2/4ページ)
賃貸幸せラボラトリー
2021/09/19
そこで、現場の状況だ。この物件を実際に見に行くと、建物は明るい色の外壁に囲まれたRC造で、1階には店舗が入っている。店舗はやや広めの美容室だ。スタッフはアシスタントを除いて8人いるそうで(店長含めた正規の美容師=スタイリストの数となる)、1人が1日少なくとも5~6人以上の客を担当している。そのため、彼ら・彼女らが月22日間ずつ稼働したとすると、この店を訪れる客は、単純計算で月900~1000人程度を下らない数となるわけだ。
なお、この美容室のエントランスは、マンションのエントランスのすぐ横、目の前のところに位置している。なので、もしもマンション側エントランスの前に何かモノが置かれていれば、美容室を出入りする客の目に、それは否応なく飛び込んでくるかたちとなる。
実はスゴイ 昭和オーナーのアナログな募集術
そこで結論だ。この物件で空室が出た際は、オーナーはマンションのエントランスに洒落たボードなどを立て、「入居者募集中」を告知するべきだ。募集のチャネルを増やすのだ。連絡先は管理会社としておけばいい。
美容室があるおかげで、いつもファサード(建物の前面)が華やかな空気に満たされているこのマンション。テラコッタ製のプランターには花も飾られ、お洒落な雰囲気が漂いまくりだ。なので、そこに掲げられる「空室あり」の告知は、ほぼ間違いなく、美容室にやってくる9割方が女性であるゲストの胸に届く。あるいは、当人に引っ越しの予定や希望がなくとも、そこから友人などへと口コミが広がることも十分期待できるだろう。
こうした可能性を現在のオーナーはよく忘れているのだ。これは、物件に「空室アリマス」の貼り紙を掲げて入居者募集をしていた昭和40~50年代前半くらいまでの大家の感覚だ。
なお、その頃といえば、こうした貼り紙のほか、近所からの人づてや、入居者が退去の際に後輩や同僚など、別の入居者を連れてくることなどで常に部屋が埋まるため、「不動産会社に募集を頼んだことがない」というオーナーも、よくいたりしたものだ。ゆえに、そんな昭和オーナーがタイムスリップして、いまここに現れたら、今回の物件については次のようなアドバイスもするかもしれない。
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編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室