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不動産投資のポイントは利回りでなく、税金を考慮したシミュレーション(2/3ページ)

小川 純小川 純

2021/06/14

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投資に必要な最低限の基礎知識

しかし、詳細なシミュレーションを行うため、入力も細かい。入力項目は「基本情報」「詳細情報Ⅰ・Ⅱ」「融資情報」「売却情報」に分けられる。

「基本情報」は、購入者が個人か法人かの属性、購入年月日、物件種別、物件価格、物件の構造、建ぺい率、容積率、家賃額、総戸数、青色申告の有無、土地面積、前面路線価、建物延床面積など。

「詳細情報Ⅰ・Ⅱ」は、固定資産税評価、管理費・修繕費、エレベーター維持費、保険料、仲介手数料、家賃下落率、空室率、設備償却など。

「融資情報」は、借入金額、借入金利、繰上返済予定など。

「売却情報」は、収益還元価格で設定するようになっている。

これらの入力については、一般的な目安などチュートリアルはついてはいるが、不動産投資の初心者には難しい部分もある。

「不動産投資が初めての人には分かりづらいところもあるかと思いますが、『失敗しない』ためには当然、収入から差し引かれる経費部分をきちんと把握していなければお金は残せません。これらの項目を入力できるぐらいは勉強をしないと不動産投資で儲けることなどできないと思います」(叶さん)

シミュレーションの結果は、

①満室表面利回り
②純収益利回り
③所有時税引前キャッシュフロー
④所有時税引後キャッシュフロー
⑤借入金比率
⑥債務回収比率
⑦自己資金の回収期間
⑧売却時の税引後キャッシュフロー
⑨投資業績
⑩投資利回り

の10項目を各10点、100点満点で評価。及第点は60点だ。また、それぞれについての論評、改善法についてのアドバイスも出る。

ただし、このソフトは、あくまでもキャッシュフローをシミュレーションするもので、家賃の設定については物件の設備、エリアの相場を自ら調査する必要がある。

赤字物件を黒字物件に変える

では、具体的にその内容を見ていこう。サンプル例の表1は、4階建てのマンション1棟。価格は2億9800万円の物件である。

■表1:物件内容(抜粋)「基本情報」をまとめたもの

表1にある内容で購入した場合の結果をリーティスでシミュレーションした総合評価は「14.5点」。各項目とコメントは表2のように出た。

■表2:総合評価 リーティスでシミュレーションした結果(見直し前)

はっきりいってしまえば、この物件をそのままの条件で購入したのでは、投資する価値のない物件ということになるわけだ。そこでこの結果から、次の5点を見直した。

①物件価格を4800万円値引き
②建物の内20%を建物付属設備と認識し10年で減価償却
③家賃下落率の1%を0.5%に改善する
④空室率の10%を5%に改善する
⑤借入金額を5580万円少なくする
⑥借入金利3%を1%に引き下げる

こうした見直しを行った結果は表3で、総合評価の合計得点が14.5点から62点に改善され、ひとまず及第点に。

■表3:総合評価 リーティスでシミュレーションした結果(見直し後)

また、キャッシュフローも購入後1年目は少ないものの、2年目からは大幅に改善し、30年後のキャッシュフローは1億7000万円以上の差が生じることになる(表4)。

■表4:キャッシュフローの違い

この結果を見ると「総合評価をよくするために物件の値引き、家賃下落率、空室率、金利などの数字を都合よくしただけ」と思われるかもしれない。しかし、こうした結果になるよう交渉したり、物件管理することが不動産投資で利益を出す条件になる。叶さんはこう話す。

「不動産業者や金融機関の出す条件がよいとは限りません。自分の目で見て、理解して自分が考える、あるいは目標とするキャッシュフローを残すにはどういう条件にすればよいかを見極めることが重要なのです」

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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