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家賃支払い猶予問題が浮上、コロナ後の不動産業界にもたらすもの

浅野夏紀

2020/04/22

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家賃滞納への対応はどうなるか?

日本列島が「コロナ不況」にもがき苦しむ中、やや遅れてやってきるのが、家賃が払えない賃貸住宅入居者が増える問題だ。アパートなどの賃料の一時的減免措置や、家賃滞納の容認の流れも一部で動きがみられものの、これが次にくる「住宅崩壊」の波といえる。

雇用や失業率の数字が大幅に悪化するのは、これからが本番。今は家賃の滞納猶予や一時的な賃料減免も検討しながら、入居者確保に動くほうがよいという声もある。

海外ではどうか?
貧富の差の二極化が著しいアメリカでは、新型コロナウイルス対策のための連邦政府の支援法に「滞納しても、4カ月(120日)間は延滞料を徴収されない」といった措置を盛り込んだ。もちろん、ドイツなど欧州の先進国の中にはもっと手厚い対策、制度を用意している。

住宅の売買が盛んなアメリカでは、住宅ローンの滞納についても目配りしている。米国ではリーマンショックに象徴される金融危機では、数百万人が住宅ローンを支払えずにマイホームを失った。

日本では国土交通省が17日、収入が急減した企業を対象に税(固定資産税など)を減免する方針で、こうした税や社会保険料の納付を1年間猶予する特例を設ける予定だ。ただ、売上高が5割以上減った場合等の条件がつくとみられる。

自治体レベルでも、対応が早かった九州の福岡市や北九州市、大分市などが賃料補填などを打ち出している。
例えば、北九州市は4月16日、福岡県の休業要請に協力した市内の中小企業などに対し、40万円を上限に店舗賃料の8割を補助すると発表した。福岡市も店舗賃料の8割補助を掲げた。しかし、議会や国、県、業界、税務当局とのすり合わせもあり、中身は発表段階で確定したとはいえない。

国の国民への支援策が、「一世帯30万円」(条件付き)が「国民1人当たり10万円」に急変更されたように、行政の支援策は流動的な部分もある。政府の緊急事態宣言は、宣言後に対象が全国に広がったが、対象期間も5月6日で終わるという保証はない。
また、賃貸住宅においては自治体が家賃の一部を自治体が支援する生活困窮者自立支援制度の条件緩和も検討されている。
景気の落ち込み期間が長くなると、失業によって、家賃が払えなくなる世帯が増える。中でも在宅勤務ができない飲食業者は営業時間の短縮や営業休止での対応しかなく、これが長引けば売上減は当然で、家賃や店舗賃料を支払えなくなり、店をたたむしかなくなる。
無利子・無担保の貸付による公的な支援はあっても限界がある。そもそも無利子・無担保といっても借金が増えるだけだ。

アフター・コロナ――変わるか不動産業界

こうした現状から “アフター・コロナ”における不動産業界の緊急課題が見えてくる。
まず、賃貸住宅においてはテレワーク対応が不可避だ。端的にいえば、テレワークに対応した高速回線や通信環境の整備が必須で、テレワークに不向きな賃貸住宅はマイナス評価となる。
こうした在宅によるテレワークが定着すれば、「会議室やオフィス必要ない」という判断をする企業が増えてくるかもしれない。
 
また、消費行動についても、わざわざ実店舗に行かず、スーパーの商品宅配やECに切り替える人に拍車がかかる。そして、それが定着すれば、不動産業界の地殻変動が起きるかもしれない。
会議室やオフィス、機能の一部が自宅で代替できる環境になるといったことが実証されたからだ。
コロナ禍によって一変させられようとするオフィスでの働き方。テレワークとECという“鎧”を纏うマイホームの新しいかたちにアフター・コロナの不動産業界はどのように変化するのか目が離せない。

(文/浅野夏紀 画像/123RF)

 

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この記事を書いた人

経済アナリスト・作家・不動産小説家

経済アナリスト・作家・不動産小説家。 1963年生まれ。東京都心在住。オフィス・ホテル・商業施設・公有地・借地等の不動産の分析、株など資産市場の分析に詳しい。住宅業界のカリスマ事業家が主人公で、創業者まで徹底的に切り捨てる政権の歴史的な不良債権処理の暗闘局面などを明かした『創業者追放~あるベンチャー経営者の風雲録』などの作品がある。

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