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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#11 マンションに住むなら高層階と中層階、どちらを選ぶべきか(3/4ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/08/21

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給水塔の近くはモーター音に注意

私自身は、マンションに住むのなら、3階または4階がベストだと思っている。

大きな理由の一つが、地震などの災害時でも、階段で上って大丈夫な高さであることだ。普段であれば、10階くらいまで階段で上り下りはできるかもしれないが、災害時に、給水車からもらった水を入れたバケツなどを運ぶことを考えると、5階以上はNGだろう。

また、1階や2階では、マンションの良さである眺望や空を見晴らす解放感が得られない。防犯上も2階までだと、空き巣や暴漢などの侵入も心配だ。マンションは玄関扉さえ施錠すれば、あとは窓も開け放って自由に過ごすことに楽しさがある。せっかくマンションに住むのなら、このメリットを享受しない手はない。

1階は、専用庭がついているので、小さい子供のいる家庭などでは1階を選択する人も多いが、これもよく気を付けたほうがよい。

私のお客様で、マンションの1階住戸の購入を検討していた人がいた。子供には庭があったほうがよい、との理由だ。私にアドバイスが欲しいということだったので、当該マンションの図面を取り寄せてみた。すると、検討していた住戸の専用庭の隣に給水塔がある。

このマンションは給水塔を屋上に設置せずに1階の空地スペースを利用していたのだ。

「お庭があるのはよいけれど、給水塔はモーター音などがうるさいかもしれませんよ」
とアドバイスしたのだが、そんな音は気にならないよ、ということでそのお客様は希望の住戸を購入された。

それから1年。件のお客様から電話をもらった。

「いやあ、牧野さんの言うとおりだった。夜中になるとモーター音がうるさくてたまらん。夏なんて窓開けて寝ることもできないよ。言うとおりにしておけばよかった」

ちなみにお子さんは小さなお庭には、いっさい降りてこず、日当たりがよくないせいか、せっかく植えた草花もすぐ枯れてしまい、結局物置になっているとのことだった。

最近のマンションは敷地内の緑化計画も充実していて、大きな樹木を最初から植樹して環境づくりに気配りをしているので、3、4階だと、この樹木の緑が借景となり気持ちの良いものだ。

虫がくるのでは?という人もいるが、高層マンションの場合は、意外と3、4階には蚊やハエなどの虫は入ってこない。なぜなら高層マンションになると、壁面に沿って常に上昇気流が流れているので、蚊などの軽い虫たちはこの上昇気流に乗って上階に運ばれてしまうことが多いからだ。むしろ上層階のほうで蚊の侵入が多いといったクレームが起こるのはこのためだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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