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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#7 これからの不動産投資で気を付けるべきこと(2/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2018/12/15

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ところが今回はやや様相が異なっている。勤労者の所得が景気の回復の割には伸びていない。世帯年収の中央値は1995年を境に下がり続け、近年若干上昇したとはいえ、家計は厳しい状況に晒されている。働き方改革で副業を認める企業が増え、低金利で借入金の調達環境が良いことなどから、一棟もののアパートやシェアハウスに投資を行う個人が増えたのだ。

この投資では節税を狙うというよりも、少しでも収入を増やしたいというのと、不動産資産として将来の値上がりを狙うという2つの動機がある。現状での不動産価格の上昇は、担保価値を引き上げる。借入金の調達に余裕ができ、金利も市場最低水準だ。かなりのレバレッジをかけてもテナントさえ入居していれば借入金は返済できる。アパート会社の賃料保証も受けられるので、ちょっとしたお小遣いになる。また不動産価格がこのまま上昇を続ければ、出口において好条件で売却できる可能性が高い、おおむねこういった動機で不動産投資が行われている。

全国銀行協会の発表によれば、2018年9月末現在の信託銀行を含む都市銀行、地方銀行、第二地方銀行計116行のアパートローン残高は22兆9388億円になっている。とくに資金の運用先に悩む地方銀行は11兆9391億円とアパートローン全体残高の約半分を占めるに至っている。

不動産投資の活況はいろいろな形で進化を始めている。まずは投資対象エリアの拡大だ。

全国から人口を集め続けている東京は不動産投資の対象エリアとしては魅力的である。しかし多くの投資マネーが東京の不動産に向かったために、東京の不動産は都心部を中心に価格が高騰し、投資利回りは下がり続けた。たとえば現在の東京都心一等地のキャップレートは3%台にまで低下している。低金利の調達環境にある現在では、それでも果敢に投資を行う主体がある一方で、リスクの顕在化を嫌って、投資を分散するというのが一般的な投資家の行動になる。

投資マネーは都心、たとえば3区と呼ばれる千代田、中央、港から、新宿、渋谷を加えた5区に、さらにその周辺区を入れるなど徐々に拡大するが、その後は大阪、名古屋など、所謂三大都市圏に戦線を拡大していく。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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