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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

「あなたの知らない物件査定の世界」〜媒介契約を取れなかった恨み節〜(3/3ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/07/16

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奥の深い不動産の査定 そこには地域特性や生活者の意識も内在

今年に入って2件目の媒介負けを食らった。

「否、査定に狂いはないだろう。何度も見直して、近隣相場も確認したが、あの物件の改修工事には雨漏りと耐震補修も必要だし、車庫無しで鳩害のおまけ付きやで。うーん、うちの査定価格より1千万円近く高い査定額って、そりゃなんぼなんでもなぁ。確かにこのエリアで新築戸建ての販売事例は車庫付きで3500万円から4000万円、中古で2千数百万円は数字だけ見ればあり得るかもやけど、実際に内覧したらわかるよ。工事費込みで新築が買えるやろ(当該物件は築年約26年)。なんでそんな査定になるんかな」と呟くことしきり。

一つだけ見逃していることがあるとすれば、それは地域の特異性。ダウンタウン特有の購入者の意識の差かもしれない。割と中心部でのリノベーション案件が多い弊社の商品特性は、中古住宅とは思えないほどにリフォームを施し、且つ購入需要の高いエリアを得意としている。

今回はそことは違う、地域に根付いた気さくな雰囲気の残る旧市街地。中古住宅の購入者としては、新築並みを求めておらず、リフォーム感覚も異なるのかも知れない。人の心に絶対はない。「何故これを買う?」なんていう驚きは日常茶飯事じゃないか。上を見ればキリがない。下を見過ぎるのは情けない。その地域に特有の中間意識というものを査定要素に加えないと、物理的な価値を優先する弊社の査定は受け入れ難いものとなってしまうのかもしれない。

〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜
不動産「AI価格査定」という宣伝文句の裏側にあるもの
なので私はこう言い放った…「メルカリで家は売れない」

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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