ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

売主・買主マッチングサイト「家いちば」に見る新型コロナによって注目される「空き家」事情 (3/3ページ)

小川 純小川 純

2021/01/07

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

売主・買主任せでトラブルなしの理由

売買でのトラブルは皆無というのも、家いちばの大きな特徴だ。なぜトラブルにならないのか。藤木さんはこう話す。

「問い合わせが殺到した物件では入札のような仕組みを提供しています。ただオークションではないので、価格で自動的に決まるものではありません。価格を出してもらうけれど、買主さん側の人柄なども含めて売主さんが判断されています。それを見ていると売主さんは必ずしも最高額の人に決めていないんですね。220万円で買うという人がいるのに、100万円の人に売るんです。これは私も驚きましたが“いい人に買ってもらう”ということに差額の120万円の価値があるということなんです。これはレアケースじゃなくて、毎回そんな感じです。こういう現実、売主さんの本当のニーズというのは何なのかというのをよくよく考えていかなければいけないなと思います」

つまり、多くの売主は売った後のことも考えて買主を決めているということのようだ。そして、買主の顔を見られることが安心につながっている。そのため「不動産会社が売主側として売却はできるが、買主側にはなりづらい」(藤木さん)という。

「海外から買えるというのも、家いちばの大きな特徴ですが、家が欲しいと中国系の方の問い合わせも多いんですね。でも、売主さんは断ることが多いようです。中国系が嫌いというわけでなく、商談のスタンスが日本人と合わないんです。やはり、相手に寄り添って交渉するということが、商談が上手くいくための絶対条件だと思います」

コロナ禍によって注目され、売買に熱を帯びる地方の空き家物件だが、今後の動向について次のように話す。

「家いちばでのコロナ以前の取引相場は100万~200万円でしたが、今はその相場が400万~500万円のものがメインになっています。この流れは、しばらくは続くかなという気はします。ただ、不動産市況全体で見ると早合点してはいけない。従来の不動産市況の流れを見ていても、必ず揺り戻しがあります。地方に一度流れれば都心の物件の相場も一度下がるでしょう。しかし、そうなれば都心回帰する人も出てきます。こうした揺り戻しを繰り返しながら新しい時代に少しずつ変わっていくんじゃないかな、という展望を個人的には持っています」

新型コロナによってダメージを受けている経済だが、中古住宅や空き家に限っては、さほどダメージはない。むしろその動きは活発化している。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

ページのトップへ

ウチコミ!