ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

売主・買主マッチングサイト「家いちば」に見る新型コロナによって注目される「空き家」事情 (2/3ページ)

小川 純小川 純

2021/01/07

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

意外と多いという「とりあえず買う」人

家いちばでの売主というのは、多くの場合、「家いちばは売れない不動産の駆け込み寺」(藤木さん)というように、不要な使わない不動産をなんとか手放したいというような事情がある人ということは想像がつく。しかし、買主はどういう人が多いのか。

「別荘、移住などいろいろありますが、どれにも当てはまらない、遊びの拠点という人もいます。また、1人で2つ3つ持つという方も全然めずらしくないですね。そして、もっと自由な“とりあえず買う”という目的が決まっていない方が意外と多い。そうした方は買ってたまに行ったり、DIYしてみたり、気に入ったら自分で住む、人に貸す、民泊にするなどの選択肢を考えているようです」(藤木さん)

その一方で、明確な目的を持っている買主もいるという。

「まさに“ポツンと一軒家”というような物件だったのですが、買主さんに『何に使うのですか』と聞くと、『保護犬を200匹連れてきます』という人がいました。『犬は吠えるので周りに家がないからちょうどいいんです』と言っていたんです。こうした物件探しに不動産業者が入るとなかなか見つかりません。その物件の売主さんも保護犬について問題意識を持っている方で、買主さんに共感されて売買が成立した例ですね」(藤木さん)

「負動産」は存在しない 条件次第で売れる

空き家問題がクローズアップされるなかで、買主の付かないこうした物件を総称して「負動産」と表現される。しかし、そうした負動産はないと藤木さんはこう話す。

「そもそも空き家が売れない、あるいは『負動産』というのは嘘だと私は思っています。これは業者や学者の想像です。コロナ以前、5年ほど前から、田舎の空き家に問い合わせが殺到するという現象はありました。こうした物件はレトロな古民家でもない普通の戸建てです。ただし、価格が安いというのは絶対の条件になります。内覧会を開くと何十人も来て、近所の人がびっくりするほどです。ゼロ円で売り出した物件が最終的に200万円の値が付いたものもあります」

とはいえ、こうした物件にまったく問題がないというわけではない。

「確かに価格を下げなくては売れない地方の物件は老朽化が激しかったり、トイレがくみ取り式であったり、不動産的なデメリットを挙げればキリがありません。でも、ある一定の価格水準の臨界点があって、それを過ぎると買主さんがワッと出てくるんですね」

とかく不動産というと、所在地、エリア、立地、設備といったファクターが重視される。

しかし、「家いちば」では、こうした不動産を見極める“常識”はあまり重視されない。まずは価格ありきということが分かりやすいのだろう。そして、物件の条件を見ながら何に使うかということを考えるのではないだろうか。しかも、不動産業者を通さないため、仲介手数料の上限額を確保するための値付けの縛りもない。

「売主・買主さんの商談の中身を見ていても、指し値でバンバンやり取りしています。買主さんの側もあいだに不動産屋さんが入らないので、遠慮なくやっています。コロナ以前は100万~200万円あたりの価格で現金で買うというのがほとんどです」(藤木さん)

そのやり取りも、ユーザーにとっては面白いのだろう。

次ページ ▶︎ | 売主・買主任せでトラブルなしの理由

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

ページのトップへ

ウチコミ!