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農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする(2/3ページ)

田中 裕治田中 裕治

2020/12/14

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【実例紹介】過去に遡って調査――市街化調整区域の農地転用(埼玉県桶川市)


駅からバス便の県道沿いの土地
・土地面積327㎡(建物の新築不可)・市街化調整区域内の農地(農振農用地)・毎年使っていなくても固定資産税がかかる
・過去に売却物件の木が倒れ、隣地駐車場の車を損傷させるなど、持ち続けることによる所有者責任リスクがある

ご相談の内容は、15年前に相続で取得した農地売却のご依頼でした。

農地といっても現状は雑木林で、過去に何度かその雑木林の木が倒れ、隣の駐車場の車を損傷させてしまい、所有者の方は車の修理代を負担したことがあるということでした。その所有者の方は、これまでも10社以上の不動産会社や行政書士にご相談されたとのことでしたが、全ての方から「市街化調整区域の農用地」のため、「売れない」と言われてしまったそうです。売主様も、将来の相続のことを考えるとこの土地を子どもに残したくないということでした。

お客様との打ち合わせ後、早速、調査を開始しました。まずは市役所などでの法令上の制限について調べると、売主様よりお聞きしていた通り、売却物件は原則建物の建築ができず、他の用途に変更することもできない市街化調整区域の農振農用地ということを確認。確かに売りづらい物件ですが、その他は特に問題となるようなことはありませんでした。

売却物件は、バス通沿いに面しており、農地というより山林に近い状態で、樹木の一部は電線より高い位置まで伸びていました。隣地には事業所と駐車場があり、複数の車が駐車されていました。なるほど、以前、木が駐車場に倒れ、駐車していた車を破損させしまったということも理解できました。

現地調査をひと通り終えたところで、隣の事業所の方にお話をうかがいました。代表の方のお話では、「以前にも売主さんより買ってくれないか」と相談を受けたとのこと。しかし、そのときは最終的に農地ということで売買できず、話はそのままと流れてしまったということでした。それを聞き私は「御社で購入できたら購入されますか?」とすかさず質問をすると、代表の方は「購入できるのであれば、検討する」という前向きなお答えをいただきました。

とはいえ、市街化調整区域の農用地の売却は、通常、農家または農業法人しか購入することができません。では、どうするか――。

方法は農地転用しかありません。

売却物件は登記地目と、農業委員会の見解ともにいずれも農地(畑)となっていました。たぶん、これまで関わってきた不動産会社などもこのことから「売れない」と判断されたことは容易に想像がつきます。ただ、往生際の悪い私は決して諦めませんでした。

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この記事を書いた人

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役

1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。

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