底地と借地の売却で重要なのはタイミング(3/3ページ)
田中 裕治
2020/11/18
「売却は承諾できない」――地主さんからの意外な答え
購入希望者との諸条件がまとまったところで、売買契約を締結。その後、お客様とご一緒に地主さんを訪問し、買主様がどのような方なのかをご説明し、借地権売却時の承諾にかかる諸条件についてのお話をして、売主様より「借地について、売却をしたいのでご承諾をお願いします」と地主さんにお伝えしました。すると、地主さんからは「売却については、承諾しない」という衝撃的なお答えが返ってきたのでした。
地主さんは「お客様が借地人だから借地している。第三者に借地人が変わることは承諾できない」というのです。それでも何度もお話し合いを続けることで、当初は頑なに拒否され続けましたが、少しずつお話を聞いてもらえるようになりました。
そして、最終的には地主さんから「借地権の譲渡を承諾するのではなく、私が所有している土地の所有権(底地)も一緒に買い取ってくれるなら、協力します」とお話をいただくことができました。
ただ、地主さんが提示された土地の所有権(底地)の金額はかなり高額のものでした。その後、買主様に底地購入をお願いし、価格調整を行います。
話がなかなか進まず、そこで売主さんに「現状のままでは、地主さんからの譲渡承諾の取得が困難であるため、このままでは契約が解除となってしまいます。それであれば、地主さんのご意向も酌んだかたちで組み立てをしてはいかがでしょうか」とご提案し、これが動き出すきっかけになります。
まず、買主様より再度、所有権としての購入金額のご提示をいただくこととしました。
とはいえ、買主様の購入金額では、地主さんのご希望の金額を捻出することができず、結果的に、お客様(売主/借地人)さんの売却金額が下がるということになりました
しかし、売主様は「多少手取り金額が下がっても、子どもにこの煩わしい借地権という不動産を残したくない」とのことで、話をすすめ、お話をまとめることができました。
その後、確定測量を実施し、隣地と相互に越境が発生しないところに境界標を設置し、全ての境界線を確定。買主様の決済条件をクリアさせ、借地権付建物と土地の所有権(底地)を同時に売却(お引き渡し)することができました。
そもそものお話は、借地人であるお客様からの借地権売却のご相談でした。しかし、協議を進める中で、地主さんからも土地の所有権を売却したいというお話になり、無事に案件を解決しました。
借地権は、所有権と比較して価格は低くなりますが、市場において流通性があります。一方、土地の所有権(底地)については、市場ではほとんど流通することはありません。かつ、相続税評価額だけが高い、相続不適格物件となります。
そのため底地は、借地人さんが売却されるときにそれに便乗し、売却することで流通しやすくなり、高い金額で売却することができます。
実際、この案件でも単純に底地だけで売却するよりも2倍以上の金額で売却することができました。
このように底地権を高く売却するコツは、ずばり「タイミング」なのです。
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第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
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第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。