使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法(3/3ページ)
田中 裕治
2020/10/08
建物が使えない「古家付土地」として販売を開始
売却活動は、建物の建築・使用ができないため、市街化調整区域で「建物の建築・使用ができない物件」だったため、そのことを考慮した価格設定で「古家付土地」として販売を開始しました。
すると、多くの問い合わせがあったものの、建物を使えない、建て替えができない(再建築不可)ということをお伝えすると、みなさんフェードアウト。予想はしていたものの、改めて難しい案件と感じさせられました。
それでもあきらめず、問い合わせて来られる方に説明を続けていきました。そんな中で以前よりつき合いのあった地元の不動産会社の代表者の方に紹介をすると「車両置場」として、検討してみようということになりました。
そうした販売活動が功を奏して、建物の建替え等ができない土地でありましたが、1300万円という金額で売却することができました。さらに売却にあたって売主様が相続不動産売却の際の譲渡所得税の特別控除の特例(相続した空き家売却時の3000万円特別控除)をご利用いただけるための方法を協議しました。
引き渡すに至るまでは、古屋の解体撤去や電柱の移設など対処すべきものもありましたが、これもトラブルなく終わり無事にお引き渡し、取り引きを終えました。
更地にして電柱も移動させた
分家住宅は属人的な建物のため、今回のように相続人であっても建て替えはもとより、使用することが認められない場合がある「負動産」です。しかし、さまざまな用途で土地が欲しいという需要はあります。要は売却に向けてチャレンジするかどうかです。
さらにこうした市街化調整区域の不動産では重要なポイントがあります。
それは今回ご紹介した実例のように市街化調整区域の戸建(古家付土地含む)で土地の地目が「農地」になっている場合は、必ず「建物があるうち(古家の解体前)に地目変更登記(農地から宅地への地目変更登記)」を完了しておくことです。
建物(古家)を解体したあとに地目変更登記をしようとしても農地扱いなるため、手続きが煩雑になったり、農地としてしか売却できなくなってしまう場合があるためです。
「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回 どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回 狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。