別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方(3/3ページ)
田中 裕治
2020/09/17
とにかく、早く処分したい
販売活動は当初、一般市場に向けた販売戦略も考えましたが、早く処分したいというお客様からの強い要望があったため、格安物件をお探しの不動産コレクターに向けて情報を発信してみることにしました。
すると、1件の反応がありました。
その内容は、土地を引き受けるかわりに「所有権移転の登記費用と1年分の管理費を売主様に負担してほしい」というものでした。つまり、売主様はタダで処分できるのではなく、登記費用と管理費1年分を持ち出すという内容です。
条件が条件だったため、売主様には、無理をして今回のお客様で話を進めず、一般市場での売却活動を行うことを進めました。
しかしながら、売主様は、
「今後、引き受けていただける方が現れるかわからない。一般市場で一定期間販売して売れなかった場合、今回の購入希望者の方がお引き受けいただけなくなってしまうかもしれない。むしろ買い手が見つからない期間が長引いて、負担が増える可能性もあるかもしれない」
との理由から、多少持ち出しがあっても手放したいというお答えでした。
その後、売買契約から引き渡しなどの手続きはトラブルもなく一切の手続きを無事に終えることができました。
今回の案件のポイントは「マイナス不動産の売却」です。
別荘に限らず地方の空き家など、マイナス不動産、負動産は今後も増え続けることが予想されます。特に所有しているだけでランニングコストがかかるリゾートマンションや、別荘地内の土地・戸建ては購入したいという方がほとんどいないため、売りたくても売れない状況になってしまいました。そのため自ら持ち出しをしてまで処分する方も多く現れるようになりました。
しかし、新型コロナによって郊外の空き家や別荘が注目されたため、それまで処分を考えていた方のなかには、高くなるかもと売ることをためらわれる方もいるという話も耳にします。
株式用語には“見切り千両”という言葉がありますが、これは不動産も同様です。使っていない、使うアテもない土地や別荘であれば今こそ手放すチャンスといえるでしょう。
「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回 どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回 狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。