共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル(3/3ページ)
田中 裕治
2020/08/14
売買の合意のあとの農地法の許可申請
しかし、農地の売買は売主様と買主様が合意したからといって終わりではありません。売買契約締結後、すぐに行政書士の先生に「農地法の許可申請」をお願いしなくてはなりません。(農地法の許可申請は、本人申請も可能)
農地法の許可申請に際しては、現場の作業予定図面や見積り、その他詳細資料を準備・作成する必要があり、専門的な知識が必須です。農地法の許可には、許可申請から許可まで約2~3カ月かかることもあります。
また、今回のケースでは、共有名義の方の中にご高齢の方がいたため、売主様の主治医からの意思能力についての意見書をもらうなど細心の注意を払い手続きを進め、売買を終了さることができました。このケースでは経験もありフットワークよい行政書士の先生だったため、こうした手続きもスムーズに進みました。
しかし、このケースはそれで終わりというわけではありませんでした。土地の取引終了後、地中よりゴミが出てくるなどのトラブルが発生しました。これについては双方で話し合いを行い、両者とも納得される結論に至り、無事に完了することができました。
さて、今回の案件は「市街化調整区域の農地の売買」ですが、農地の売買・賃貸については、実は首都圏の不動産会社の営業担当者はその方法やノウハウを知らない方がほとんどです。こうしたノウハウがないと、1000万円で売却できる物件が半分以下になったり、いつまでも売れないこともあります。そこでポイントは相談する不動産会社ができないのであれば、そういうネットワークを持つ会社かどうかを見極めることです。
今回のケースは、相談者が直接当社に来られたのではなく、別の不動産会社からの紹介でした。その場で断られても、あきらめずそうしたネットワークがないか、聞いてみるのも農地を売却するための1つの方法なのです。
「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回 どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回 狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。