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投資法人の課税の特例

不動産投資信託では実質的に法人税が免除される
会社型の不動産投資信託では投資法人が重要な役割を果たします。さらに一定の条件を満たす投資法人には、税法上の特例が適用されることになっています。根拠となる条文は租税特別措置法第67条の15、「投資法人の課税の特例」と呼ばれるものです(正確には「投資法人に係る課税の特例」)。
この特例は「法人税を事実上ほぼ免除する」というもの。一定の条件を満たすことを条件に、税法上の所得である税引前当期利益の90%超に相当する額を分配金として投資主に支払うと、その分配金に相当する額を法人税法上の「経費」として計上できるのです。すると投資法人は所得のほとんどを投資主に分配することになります。このため投資法人は不動産と投資家との橋渡しをする「ビークル(乗り物)」と言われることがあります。
様々なビークル
ただし、不動産投資信託のビークルは投資法人だけではありません。不動産投資信託には、投資法人が運用する会社型と、信託が運用する契約型などがあります。契約型の場合は信託がビークルになりますし、実際には多様な形のビークルが存在します。
ビークルは法的な形式を備えることが重要で、資産管理や証券発行などの実務はほぼすべて外部に委託します。実物資産ではなく資産価値を保有するので、ビークルは「器(うつわ)」と呼ばれることもあります。
ビークルには次のようなものがあります。

・特定目的会社
特定の資産を裏付けとする有価証券を発行するためだけに設立される法人のこと。その設立は「資産の流動化に関する法律」に基づいており、証券化の対象となる資産を独立させることにより倒産隔離機能(リスクを資産の範囲に限定する)を発揮し、投資家への二重課税を回避します。なお、特定目的会社は一種のペーパーカンパニーで、資産が処分されると解散となります。

・特定目的信託
資産の流動化を目的とした信託で、やはり「資産の流動化に関する法律」に基づき設立されます。特定目的会社とほぼ同じ機能を発揮することができます。

他にも匿名組合や任意組合などの組合型ビークルが存在します。
倒産隔離と導管体
先に述べたとおり、ビークルは倒産隔離というリスクを避ける機能を持っています。不動産投資信託に関わる企業が倒産しても、投資家の資産は法的に守られるようになっているのです。また、「投資法人の課税の特例」の要件を満たす機能のことを導管体と言います。資産から得られた利益をそのまま投資家に配分するために、法人税を支払わなくても良いようにしているのです。ただし、利益が配分された投資家には当然課税されます。