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匿名組合

匿名組合はビークルの1種
不動産の証券化などにおいては、投資法人などが有価証券を発行します。例えばペーパーカンパニーである特定目的会社(SPC)は「投資法人の課税の特例」が適用されると、法人税が事実上免除されることで所得のほとんどを投資家に分配できます。このため投資法人などは不動産と投資家を橋渡しする「ビークル(乗り物)」と呼ばれることがあります。匿名組合もビークルの1つです。
不動産を小口化して所有する「匿名組合型」の手法
匿名組合とは、匿名組合員が営業者の営業のために出資をし、その営業から生じる利益の分配を受けることを約束する契約のことを言います。匿名組合は商法によって規定されます。例えばお金を借りたい会社とお金を運用して増やしたい人をマッチングさせる「ソーシャルレンディング」と呼ばれるサービスでも匿名組合が利用されています。ここでは「匿名組合型」の「不動産小口化商品」に絞って話を進めます。
匿名組合型の不動産小口化商品は「不動産特定共同事業法」を利用して商品化されます。不動産小口化商品とは、1つの不動産を小口化して投資家に販売し、投資家は不動産から得られる収入やキャピタルゲインを得るというものです。何だか不動産投資信託(J-REIT)に似ていますね。小口化商品を利用すれば、個人投資家ではとても手が出ないような大型物件に投資することが可能になります。一方、不動産投資信託では投資法人が複数の物件を扱い、随時売買を行うので、投資の内訳は投資家にはわかりません。このため不動産小口化商品の方が不動産投資信託より不動産投資に近い金融商品だと言われています。
匿名組合型のメリット
また、不動産の所有権は事業者から動かないので、投資家は登記費用を負担する必要もありません。
「匿名」と呼ばれるのは、投資家と事業者の間にしか契約関係が存在しないからです。投資家同士の間に契約関係がなく、不動産登記も事業者によって行われるので、投資家は対外的に匿名性を保つことができます。投資家は責任の範囲も限られており、出資金額以上に損をすることはありません。また、ビークルには倒産隔離機能があるため、事業者が倒産しても投資家の利益は保護されるようになっています。
匿名組合型は不動産小口化商品として最も多く販売されている商品だと言われています。多くは短期の商品なので、短期運用に向いています。さらにほとんどの商品は優先劣後構造(債券の一部に貸し倒れが出た場合でも元本が優先的に投資家に支払われる)を採用しているので、元本の安全性も高くなっています。1棟所有の不動産投資に比べると収益の分配率は低くなりますが、安全性が高く、比較的安心して分散投資先として利用できる商品だと言えるでしょう。