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既存不適格建築物

違法建築とどこが違う?
「違法建築」と言えば、文字通り違法な建築物のこと。一方で「既存不適格建築物」という建築物もあります。「不適格なのだからそれも違法なんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実際には違いがあります。
まず、違法建築とは建築基準法や条例などの法律に沿わない建築物のことです(法令上は違反建築物と呼ばれます)。新築時点で違法な作りにしてしまった場合だけでなく、増築・改築によって違法となった場合でも違法建築と呼ばれます。違法建築の場合は撤去、改築、移転、使用禁止、制限などの命令対象となります。例えば増築に増築を重ねて建ぺい率・容積率がオーバーしてしまった建物などがこれに当たります。
一方、既存不適格建築物とは、すでに建っている建築物が、後に法改正や新法の制定によって法律に適合しなくなったもののことを言います。例えば現行の耐震基準や容積率などを満たさなくなっている建物が既存不適格建築物と呼ばれます。
違法建築とは違い、既存不適格建築物は法律が変わったからと言って即時対応を迫られることはありません。まず、「法の不遡及(ふそきゅう)」という原則があります。不遡及とは「法令の効力はその実施以前の事実にさかのぼって適用されない」ということです。また、法令は大きく変わることもあれば細かい改正が行われることもあるので、その度に不適格建築物を違法とするのは現実的ではありません。
ただし、既存不適格建築物を増築したい、改築したいという場合は事情が違います。当然、増改築は現行法に従わなければなりません。例えば建築後に建ぺい率や容積率の面積制限が変わって床面積が制限をオーバーしてしまった場合、それ以上面積を増やすことはできなくなります。大規模修繕や増改築などを伴わないリフォームであればオーバーした面積を削る必要はありませんが、確認申請が必要なリフォームなどを行う場合は現行の法律に従う必要があります。
新築ができない「再建築不可」
違法建築(違反建築物)、既存不適格建物と同じように建築を制限する規定に「再建築不可」があります。再建築不可物件とは建物を取り壊して建て替えたりできない物件のことです。理由はその物件が接道義務などを果たしていないため。建築基準法では原則として敷地は幅4m以上の道路に間口2m以上で接していなければなりませんが、建築基準法の制約がなかったころに建てられた建物はこの規定を満たしていないことがあるため、解体して更地にしても新築の建物を建てられない場合があります(条件をクリアすることで建築できるようになる場合もあります)。