近年、相続の制度が変わります

遺言書

民法で定められた相続の規定を現代社会に対応するよう来年の国会提出に向けて、今年の6月に民法改正の中間試案が出ました。マンションオーナー様にとっても近い将来、相続手続きがどのように変化するのか興味があるかと思いますので、情報提供させていただきます。高齢化社会が進む中で、結婚、核家族化、離婚、再婚、介護という家族にとって重要な場面が昔に比べて数多く発生するようになったことから、長年連れ添った配偶者が優遇されるような改正になるようです。

【主なポイント】

  1. 結婚期間が長い場合に配偶者の相続分を増やす。
  2. 配偶者が自宅に住み続けるれる「居住権」を設ける。
  3. 介護などで貢献した人が相続人に金銭を請求できる。
  4. 預貯金を遺産分割に対象にする。
  5. 自筆遺言の一部にパソコン作成を認める。
  6. 遺留分制度を見直す

【①につき】
50歳~64歳以上の再婚は30年前に比べて約2倍に増加し、65歳以上の再婚は約4倍に増加していますので、長年連れ添った配偶者には現在の2分の1から3分の2へ割合を増やす案が出てます。

【②につき】
残された配偶者が自宅の所有権をもたなくても、住む権利が保護される「居住権」が検討されています。一つは配偶者が自宅に無償で住んでいれば、遺産分割が終わるまで、遺言で配偶者以外の者に渡す場合は、例えば、6ケ月に限り住むことが出来る「短期居住権」。もう一つは、遺産分割協議後も所有権の代わりに「長期居住権」を取得して、自宅に住み続けることが出来る権利です。

【③につき】
現在の社会にもよくあるケースで家を出た子供たちは一切介護をせずに、長男の妻が同居の父母(高齢者)の介護をしている場合等、その貢献度によって金銭を請求することが出来る権利です。

【④につき】
判例によりますと、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、相続人に法定相続分に応じて帰属するとされています。つまり遺産分割の対象に含まれません。一方銀行実務では、相続人全員の承諾や遺産分割協議書の提出がなければ相続人の一人からの払戻しには応じてもらえません。一般社会の感覚と銀行実務に対応したものにするようです。

【⑤につき】
自筆遺言の要件として、全て遺言者自身が自筆で全ての文章を書く必要があり、その要件を欠くと遺言として認められません。改正案では、不動産の表示等はパソコンを利用して作成してもよくなります。

【⑥につき】
遺留分減殺の請求は原則として、預貯金、株式、不動産等全ての財産に対して、請求する現物返還で、金銭に変えることが出来るという考え方でした。原則と例外を逆転させ、金銭での支払いを原則にしたものです。 法務省は現在、国民の意見を聞くため、パブリックコメントを募集してさらに議論をつくして、改正法案を提出する予定ですので、内容の変更等があるかもれませんが、長年連れ添った配偶者を優遇する方向性は維持されることになるでしょう。

この記事のコラムニスト

岡田一夫
岡田一夫(司法書士・行政書士)
おかだ司法書士 / 行政書士事務所。同志社大学経済学部卒業後、平成4年司法書士試験合格、平成7年独立開業、平成8年行政書士資格取得。
不動産登記、商業登記等の登記業務を中心に、建設業、宅建業、運送業等の許認可業務も取り扱っております。多くの不動産賃貸経営者をクライアントとする税理士事務所の依頼により、相続に伴う財産・事業承継に数多の経験があります。最近では、経営者の高齢化に伴い、いわゆる家族信託スキームを利用した権利の保全・財産承継の業務が増加してきております。
登記業務はどの司法書士に依頼しても成果は同じですが、遺言、信託等の保全業務は「する」か、「しない」かで結果は全く異なります。他の士業と連携し、トータル的に国民の権利保護に寄与できればと考えています。
[担当]不動産登記
岡田一夫は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。