「仲介手数料ゼロ」と謳う不動産広告に隠された意図とは?

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仲介手数料は不動産業の利益の源泉のはずだが・・・

インターネットの浸透により、不動産物件情報サイトも充実してきました。ここに挙げるまでもなく、ヤフーやグーグルで「物件情報サイト」と入力して検索すれば、大手から中小までたくさんのウェブページが検索されて並びます。

実は不動産業界は、広告のみならず、ウェブ事業に最も資本投下をしている業界の一つなのかもしれません。

そのなかで、思い切ったところでは「仲介手数料ゼロ円」を謳う会社もいくつか出てきました。

でも、ちょっと考えたら、「それはおかしい」と思いませんか? 仲介手数料は営利事業を営む不動産業の利益の源泉であり、それがゼロ円では事業を営めなくなるのですから。仲介業者の営業マンの懷に入る「担ボー」がないのとはワケが違います。もちろん、不動産業を営むうえでの業法に沿った対応ともいえません。

消費者にとっては総体としての家の値段が安くなるのはとてもありがたいことなのですが、大げさに言うと、仲介手数料ゼロと謳ってしまうと不動産業は成り立たない。つまり、業界全体が成り立たず、最終的には利潤を追求する資本主義そのものを否定してしまうことにもなり得るのです。

もし、時間があったら、インターネットで「仲介手数料ゼロ」と検索してみてください。1社や2社だけでなく、たくさんのウェブページが並ぶことでしょう。それを見たあなたは、ひょっとすると、不動産会社に仲介手数料を支払うことがバカらしく思えてくるかもしれません。

その仲介手数料「ゼロ円」は条件付きではないか?

でも、ちょっと待ってください! そこで、それぞれのウェブページを開いてよく読んでいくと、いろいろなことに気づくはずです。たとえば、

  • 実際には賃貸の敷金礼金をゼロにしているだけである
  • 売り物件か買い物件か、のどちらかの仲介手数料をゼロにしている
  • 仲介手数料ゼロを大きく謳っているが、対象物件が限られている
  • 特定のアライアンス業者だけの仲介手数料をゼロにしている
  • 仲介手数料の必要のない自社販売物件の仲介手数料をゼロ円と謳っている

・・・と、要は「条件付き」でゼロにしているケースが多いということに気づくでしょう。これは、どういうことを意味するのか、わかりますか? 実は仲介手数料ゼロ円ということを集客の“エサ”にしているのです。

不動産不況と言われ、それでなくともお客さんの数は減り、不動産会社としてはどこにお客さんがいるのか見えなくなっている状況なのですから、仲介手数料ゼロ円には格好の集客効果があります。場合によっては、仲介手数料をゼロにして売り物件をたくさん仕入れ、少しでも売り仲介業者のポジションに立とうとしているということもあるでしょう。

もとより不動産業は賃貸・売買と取引の形態が極めて幅広く、それらの取引が複雑に絡んだ形でブラックボックスの中にあるので、実は消費者からのお金の取りようはいくらでもあると考えたほうがよいのです。

消費者の立場から言い換えると、みなさんにとって何が得な取引で、何が損な取引かはまずわからないようになっていて、「小さく損して、大きな得をとる」業者はたくさんいるということです。

「仲介手数料ゼロ円」はまさに「モノは言いよう」で、不動産業界はその程度のことで損を被るだけの業界では決してありません。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事のコラムニスト

大友健右
大友健右(株式会社総研ホールディングス代表取締役社長)
株式会社総研ホールディングス・株式会社アルティメット総研・株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長。1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。
ウチコミ!創設者
大友健右は収益物件の個人間直接売買ができるプラットフォーム「ウチコミ!」の創設者です。