不動産投資~貸店舗・事務所編~

貸事務所

不動産投資には、住宅を対象としたものの他に、駐車場や企業を対象としている物件や投資方法があります。 今回は、企業を対象とした(貸店舗、事務所)に関する不動産投資について住宅を賃貸とした場合と比較してご紹介します。

利回り
住宅の場合は、生活することを主の目的として賃貸借契約を締結します。これは、民法601条で規定されている賃貸借の『物の使用』に重点を置いていることを意味します。 これに対し、店舗の場合は『物の収益』に重点を置いているため、店舗を対象とした不動産投資の方が住宅より高い家賃設定が可能となります。 よって、利回りも住宅に比べ高くなります。
空き室
住宅の場合、景気が悪化してもすぐに退去とはならないため不景気においても賃料収入を望めます。 しかし、店舗の場合には不景気だと撤退や閉店・移転が行われます。そうなると、賃料が高価なため損失も大きくなります。 また、一度空き室になると投資物件にもよりますが、住宅の場合は次の賃借人が短い期間で見つかるのに対し、店舗の場合には1年以上空き室のままということもあります。 この違いは、住宅の退去の理由は、ほとんどの場合が生活環境の変化によって行われます。これに対し、店舗の場合は、上述したように景気によって退去することが多いことにあります。 例えば、Aさんが大学卒業を機に退去したとしても、4月には大学入学を機に一人暮らしするBさんが入居することもあります。 しかし、不景気が理由で退去した店舗に関しては不景気にもかかわらず、新しい店舗を出す企業は多くありません。この違いが、店舗の場合には空き室期間を長くする一つの要因です。
経費
マンションやアパートの場合、共有部の電球や、清掃などの管理費がかかります。これは、店舗を対象とする場合も同じことがいえますが、ビル一棟貸などの場合には、賃借人負担になることが多いのでその分の管理費を削減することができます。
立地条件
店舗と一概にいってもさまざまな業種があり、入居者の希望と少し違うだけで契約締結に至らないということが多いです。 これに対し、住宅の場合における入居希望者は、理想と少し違うというのみでは契約締結するほうが多いです。 例えば、一階の貸店舗にはコンビニエンスストアや薬局などの企業に需要が多いのに対し、二階以上の貸店舗にはジムや士業の事務所(弁護士事務所や司法書士など)などの企業に需要があります。投資物件がどの企業形態の需要に合致するのかも重要になってきます。 他方、住居の場合には、階数はなんでもいいので家賃の安価な方を選ぶ、間取りは気にしないが交通の利便性を重視するなど多少の譲歩があり契約を締結します。 したがって、店舗を対象とする投資物件の場合には住宅の場合に比べ、より高度なノウハウが必要になります。
原状回復
住宅の場合、原状回復費用は貸主が原則負担します。通常損耗を超える場合に借主が負担するなどの契約が多く見られます。 これに対し、店舗の場合は「スケルトン渡し」で賃借人に貸し出し、退去時も「スケルトン」の状態に原状回復して返却する特約が有効になる場合があります。 スケルトン渡しとは、壁紙と支柱のみで、間取り、内装などが全くない状態で貸し出すことを意味します。こうすることで、企業側は店舗のレイアウトを自由に決めることができます。 判例によると、原状回復特約に通常損耗を対象としていることが明確にある場合には、通常損耗の原状回復義務も賃借人に負担させることが可能になります(東京高裁平成12年12月27日、最高裁平成17年12月16日)。 契約締結の際に、うっかり原状回復特約を入れ忘れてしまった場合、オフィスの規模にもよりますが、高額な費用がかかることもあるので、契約書の締結など弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。