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賃貸・凍える「寒い部屋」を選んでしまわないためのチェックポイント

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若者は温室育ち?

もう10年近くも前から言われていることだ。大学への入学のため、あるいは就職のため、一人暮らしを始めた若者が、アパートや賃貸マンションで、それまでの人生で経験のない部屋の「寒さ」に悩まされることが多い。

なぜだろう? 理由は単純だ。彼らの多くは暖かい家で育っている。90年代から2010年代にかけ、日本の一戸建て住宅や分譲マンションの温熱環境は格段に改善されてきた。そのなかで大切に育まれてきた子どもたちこそが彼らの世代だ。

そのうえで、彼らがいよいよ独り立ちすることになる。すると、これを迎えるのが多くの賃貸住宅となる。寒い物件が非常に多い。理由はこちらも単純だ。わざわざコストをかけて断熱性能を高めても、さほど物件の見映えは良くならない。効率上、投資優先度はどうしても下がることになる。

しかしながら、寒い部屋に住むことは住む本人にとって深刻だ。暮らしにくいだけでなく、健康にも悪影響が及ぶ。そのことは、実感としてのみならず、近年いくつかの研究で数値的にも明らかになっている。「寒い部屋は住む人の寿命を縮める」などのショッキングなタイトルとともに、そうしたデータがインターネット等で紹介されているのを見たことのある人も多いだろう。

賃貸にとりわけ多い「寒い」部屋。うっかりこれをチョイスして凍える思いをしないよう、注意しておきたい代表的なチェックポイントをいくつか挙げていこう。

寒い賃貸の定番設備! アルミサッシの1枚窓

「ガラス1枚がアルミサッシにはまっているだけ」「窓はそれが左右1枚ずつのみ」――寒い賃貸に見られる定番の仕様といっていい。こうした窓が付いた賃貸の部屋は、残念ながら世の中に数多いが、暮らしやすさと健康を考えるならば極力避けた方がいい。室内の熱が窓からどんどん逃げるため、冬はとにかく寒く、結露もしやすい。外窓・内窓が2枚重なった「2重サッシ」や、窓は1枚でもガラスは2枚以上がはめ込まれている「複層ガラス」、さらには「樹脂サッシ」といった断熱性能に優れた窓が入った物件をぜひとも選びたい。

すき間風は覚悟! ハンドルくるくるの「ルーバー窓」

ハンドルを回すと、羽重ねされた何枚ものガラスが動き出し、換気が可能となるルーバー窓。キッチンや玄関脇、バスルーム、トイレなどに見られることが多い。構造上、窓を閉めた状態でもすき間が生じるため、風が通りやすい。当然、寒さにも悩まされやすいことになる。なおかつ、実態上はガラス1枚窓でもあるため、部屋の熱が逃げ出す通り道にもなる。実に困った設備といえそうだ。居室の窓が断熱性に優れた二重サッシなのに、キッチンなどにはルーバー窓が付いているといった残念な例もある。

キッチンスペースと居室の間に仕切りがない「1K風ワンルーム」

時には1Kと称して入居者募集されることもある。居室の一角にキッチンがあるのではなく、居室とキッチンスペースが明確に別れているタイプのワンルームだ。キッチン、バスルーム、トイレ、玄関がワンセットに集められていて、居室はその奥にある。問題は、両者の間にドアや引き戸が無いことだ(あれば1Kとなる)。単身向けの物件では定番のひとつといえるほどよく見られる仕様だが、この場合、居室側で暖房器具を懸命に動かしても、温められた空気はキッチン側に逃げていく。代わりに流れ込んでくるのが、玄関ドア付近などで冷やされた冷たい空気となるわけだ。なお、断熱性能の高い玄関ドアが賃貸に採用される例は、2重サッシや複層ガラスが窓に使われるよりも少ないと思われる。

便利なロフトに寒さのワナ?

大型の収納として使えたり、時には寝床にもなったり、便利な空間として大活躍してくれるロフト。しかし、冬は暖房で温められた空気を吸い上げ、部屋の低層部分を寒くする元凶ともなりがちだ。なかでも特に要注意なのが、アパートの2階などでよく見られる屋根裏ロフトだ。賃貸では屋根に断熱が行き届いていないことが多いため、屋根裏は格好の熱の逃げ道となっている。どれだけエアコンの暖房をかけても、温風はロフトへと急上昇、熱は屋根を通り抜けてどんどん外へ、という悲しい状態にもなりやすい。

人気はあれど、寒さは覚悟の「最上階・角部屋」

3階建て以上の集合住宅では、部屋の上下左右が他の部屋に囲まれているケースも多い。どこか息苦しい感じがし、確率的には騒音にも悩まされやすいが、「冬でも暖かい」「暖房費がかからない」などの声もよく聞かれる。四方の部屋が熱源になってくれるからだ。また同時に、熱の流出を抑えるダムになってもくれている。一方、不利なのが角部屋や最上階の部屋だ。とりわけ「最上階・角部屋」の場合、天井面と壁とを合わせて3~4面が建物の外側に接することになる。屋根または天井、壁、加えて窓に適切な断熱が施されていないと、当然、寒さに悩まされる部屋になりやすい。

夏に暑かった部屋は、冬寒くなる

以上、うっかり借りて住んでしまうと冬は寒さに悩まされる……そんな可能性が高い部屋の代表的な仕様を並べてみた。

ところで、今年の春から賃貸で一人暮らしを始め、冬はまだ経験していないというあなた。夏はどうだったろうか? 東京都心での猛暑日が観測史上最多を更新したなどのニュースが話題となったこの夏、部屋での居心地はどうだっただろう?

「うだるような暑さでした。冷房もちょっとやそっとの設定では効かず、エアコンの電気代がハネ上がりました」――などという人は、次は冬の寒さへ向け、心の準備をしてほしい。

なぜなら、さきほど例に示したとおり、冬に暖房の熱が外に逃げていきやすい「寒い部屋」というのは、要は、部屋の中と外との間の断熱が効いていない部屋なのだ。なので、夏は外から熱の侵入を受けやすく、冬は逆に出て行きやすい。「ガラス1枚のみのアルミサッシ窓が左右1対」の窓は、すなわち夏暑く、冬は凍える部屋を作り出す無慈悲な窓だ。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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