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「まわし物件」を利用した不動産会社のズルい営業方法とは?(2/2ページ)

大友健右大友健右

2016/08/02

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さて、まわし物件にはもう一つ、「値段の高い家」を見せる方法もあります。ごく普通の家でも個人売主の考える値段が相場より高ければ、その値段で買主に紹介するわけです。

「お客さん、今このあたりの家はこのくらいの値段で出ているのが実情です」といった言葉で営業マンは買主と一緒に数軒回り、最後の1軒で、これまでの物件と比べてほとんど見劣りしないけれども少し価格の低い物件に案内します。

「これはイチオシのお勧めです。今、お申し込みいただければ・・・」

そう言われると、買主の購買意欲もグンと高まってくるでしょう。

ブラックボックスの中と外では情報量が圧倒的に異なる
個人売主が不動産会社を訪れた場合のまわし物件への活用そのものが後出しジャンケンなのですが、この後出しジャンケンは、いろいろなところに波及していきます。

先の「買いたくない家」のケースでは、結局、売却できないということがわかると、リノベーション業者にもっていく手法があります。リノベーション業者とは、リフォーム業者とは異なり、もとの家を改修し、より付加価値を高める業者です。その業者に卸すことができれば、取引としては両手取引が実現します。

さらに、その不動産会社に力があれば業者として買い取り、リフォームだけして付加価値を高めたように見せて再販するという手法をとることもできます。これは準大手不動産会社クラスの得意技と言ってもよいでしょう。この物件に担ボーが付けば、売り仲介業者としては両手両足取引も可能となるのです。

一方、値段を高く設定したケースでは、個人売主が、休みのたびにお客さんがくるのに売れない状態にあせり始めた頃に、不動産会社の営業マンが「そろそろ値段を下げたほうがいいかもしれない」と告げ、金額を引き下げさせ、目玉物件として他の不動産会社(買い仲介業者)に来たお客さんに買わせて仲介手数料をいただくというようなしくみにもなるのです。

結局のところ、後出しジャンケンは、次のような人間関係から生まれます。

個人売主はブラックボックスの外の人。
売り仲介業者はブラックボックスの中の人。
買い仲介業者もブラックボックスの中の人。
個人買主はもちろんブラックボックスの外の人。
そして、新築の売主は業者ですからブラックボックスの中の人。
まれに出る、業者が売主の中古住宅を売る仲介業者はブラックボックスの中の人。
ブラックボックスの中と外は、情報量が圧倒的に異なる。
先に、政府が進める長期優良住宅の施策は進まないと書いた理由もここにあります。日本の住宅がスクラップ・アンド・ビルドを繰り返しているのは、中古住宅に価値がないからではありません。個人が売主の中古住宅は、ブラックボックスの外からハンデを背負って中の流通網の助けを借りて販売するので、勝てないのです。

この現実を前にして、まともな商売や相談ができると思っている人のほうが間違っている、と言わざるを得ません。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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