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改正民法における賃貸借 その1(2/2ページ)

森田雅也森田雅也

2019/06/19

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両者の関係

賃借人の原状回復義務の履行時は「賃貸借が終了したとき」と規定されているのに対し、敷金返還の時期は「賃貸物の返還を受けたとき」(改正民法622条の2第1項1号)となっているため、規定上は賃借人の原状回復義務が先履行となります。
また、実務は賃借人が業者に依頼し原状回復を行うことは稀であり、ほとんどの場合は、賃貸人が原状回復を行い、当該費用を敷金から控除し、余った場合には賃借人に返還しています。

これらのことから、賃貸人が原状回復を行う場合にあっては、賃借人は賃貸物の返還をしただけでは直ちに敷金の全額返還を請求できるわけではなく、賃貸物の原状回復費用を控除した残額の敷金を請求できるにすぎないことになります。

このときにおいて、通常損耗などを賃借人の負担にする特約が有効の場合は、特約に基づき敷金から原状回復費用を控除することができますが、特約が消費者契約法により無効と判断された場合においては、敷金から控除できる原状回復費用は賃借人に帰責性がある損傷部分についてのみに限定されていることに注意しなくてはなりません。

このように敷金や原状回復の特約などは、契約書の作成の初期段階から契約終了時の段階にまで関わり非常にトラブルの多い問題ですので、少しでも不安なことがあれば弁護士に相談し、未然にトラブルを防ぐのがいいでしょう。

 

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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