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「民泊」と「旅館業法」の「簡易宿所」の違いについて(2/2ページ)

熊ヶ谷一幸熊ヶ谷一幸

2017/02/06

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では、「旅館業法」の「簡易宿所」の許可取得を目指す場合、おそらく最大のハードルになると思われるのが、「建築基準法」に適合している物件でなければならないとの要件になるかと思われます。現状で、検査済証の交付を受け、その後増改築していなければ最初の段階はクリアとなります。これに対し、そもそも検査済証がない場合や増改築部分に検査済証がない場合には、建築士に物件が建築基準法に適合しているとの証明をしてもらう必要があります。次に、簡易宿所に供する部分が100㎡を超える場合は、その部分について、「建築基準法上」の「用途変更」の申請が必要となります。

なお、「旅館業法」の「簡易宿所」の許可については、一棟全部で許可を取得する必要はなく、建物の一部でも可能です。但し、他の用途部分との区分けは要求されておりますので、一般入居者と混在するような場合は部屋数にもよりますが、許可の取得が難しくなります。このほか、㎡数(現状33㎡以上)や部屋数その他設備に関して、様々な要件がありますが、市町村の許可担当者と個別に折衝していく必要があります。また、対処方法も多数ありますので、必要最小限の設備を整えれば超えられる可能性は高いと考えられます。

許可取得後について、売却時についても注意が必要です。この「旅館業法」の「簡易宿所」の許可は、物件の所有権移転に付随するものではありません。よって、買主は「簡易宿所」を継続しようとすれば、新規で許可を取得する必要があります。

所有権移転時における「簡易宿所」の継続には、注意が必要かと思われます。(許可が途切れる可能性があります。)「簡易宿所」をやめる場合、取得時に「建築基準法上」の「用途変更」を行っていた場合には、この「用途」についても再度変更する必要が生じる可能性があります。

いずれにしても、これから順次条例が施行されればグレーゾーンが白黒はっきりしますので、条例内容に外れる民泊事業者は法的に裁かれることになりそうです。今後も、「民泊」については、その動向をしっかりと注視していきたい思っています。

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この記事を書いた人

不動産鑑定士

株式会社東洋不動産研究所 代表取締役。1966年(昭和41年)生まれ。平成元年 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。 学生時代はバトミントンなどのスポーツとアルバイトに没頭。不動産を生かすのは人間次第であり、個人生活・企業活動の成長は不動産のあり方・価値を極大化し、さらに個人生活・企業活動を成長させる、という不動産とのベストな付き合い方を提唱。どのタイミングで取得して処分するのかを時間軸でとらえ、ソリューション型の不動産調査・鑑定を日々実践している。 趣味は、エアロビクス。大手スポーツクラブの特別会員となっており、時間があればあちらこちらのスタジオに出没しては、主に中上級者向けエアロビクスを楽しんでいる。来年は、競技エアロビクスにチャレンジしようと考えている。 [担当]物件調査 熊ヶ谷一幸は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。

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