家づくりで地震に強い土地を選ぶには?
菅 正秀
2016/01/23
地震被害の原因
地震に対する土地の強さにいちばん関係してくるのは、地盤の強弱です。地盤が強ければ地震にも強いですし、逆に弱ければ地震にも弱いということになります。
日本の地形は、山地・丘陵地・台地・低地の4つに分けられますが、古い地層の山地・丘陵地・台地は一般的に良好な地盤です。しかし、その上の造成地や低地は、新しい地層になっていることから、軟弱かつ不安定な地盤が多くなっています。特に川・池など水に関する文字が含まれている土地は低地であることが多く、地盤が弱い傾向にあります。
そして、地震が起きた際に地盤自体に損傷がなかったとしても、軟弱な地盤は地震の揺れが大きくなりますし、せっかくのマイホームが台無しになりかねません。そこで、購入候補の土地の地盤をチェックしておくことが大切です。
地盤の強さを知る
それでは、土地の地盤の強さを知るにはどうしたらよいのでしょうか?
それが地盤調査といわれるものです。実際に家を建てる段階になると必ず行なうものですが、これは住宅の耐震性・耐久性に大きく関係する基礎を正確に設計するために必要なものです。そして、地盤に問題がある場合には地盤改良を行なわないといけないので、そのためにも必須なのです。
地盤調査には、ボーリング調査のような大掛かりなものから、ビル建設などで採用する標準貫入試験などさまざまな方法がありますが、住宅で比較的よく採用されているのが、スウェーデン式サウンディング試験や表面(レイリー)波探査です。
スウェーデン式サウンディング試験は、先端がスクリュー状になっている棒に重さを加えることで地中に貫入させる調査方法です。調査する敷地の3~5点程度を測点とし計測しますが、この調査だけでは地盤の構成状況はわからないので目視で確認する必要があります。
一方、表面(レイリー)波探査では、地表に起震機を設置、非常に小さな人工地震を発生させて地震波の速度を計測し、地耐力に換算し地盤の強さを調査します。この調査法では、異物の混入や層の厚さは確認できますが、データの解析は熟練した専門家が行なわければなりません。
ちなみに住宅における地盤調査は、10万円以下の費用ですむことが一般的です。
地盤調査の結果に問題があった場合
地盤調査の結果、残念ながら地盤が弱いと判断された場合には地盤改良工事を行なうことになります。実際にこの工事が必要になるのは、全体の4割弱といわれています。
地盤改良工事にはいくつかの方法がありますが、代表的なものを紹介しましょう。まず、基礎仕様を変更すること。地盤が良好な場合採用する「布基礎」を「ベタ基礎」に変更することで強度を上げる方法で、15万~40万円の費用がかかります。次に、弱い地盤が深さ2メートル以内の場合は、表層改良工事という土にコンクリートを混ぜて強度を上げる方法で行ないます。この場合、10万~50万円の費用となります。
さらに本格的な工事が必要な場合は、柱状改良工事・鋼管杭打ち工法を採用します。前者は、弱い地盤が深さ2~8メートルくらいのときに採用され、地盤が弱い地層に穴をあけコンクリートを流し込み人工の柱をつくることで強度を上げる方法です。後者は、さらに深く掘り進めないと強い地盤に届かない場合に採用する方法で、鋼の杭を強い地盤まで打ち込むことで強度を上げます。
このように、地震が多いこの国では、地盤調査を行いその地盤の強弱に合わせて対処していかなければなりません。家が多くなった現代では、ある程度の弱点のある地盤でも住宅を建てている実情もあります。だからこそ、自分の家を建てる土地の調査は、しっかり行なうことで災害に強い家づくりをしていきましょう。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。