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風致地区

自然の趣や味わいを維持する制度
一般の人とはあまり縁がないかもしれませんが、都市の住環境関係のことを調べていると「風致地区(ふうちちく)」という言葉が出てくることがあります。「風致」とは自然の景色などの趣(おもむき)や味わいのこと。風致地区とは都市の風致を維持するため、都市計画法に基づいて指定された地域のことです。
風致地区という制度は大正8年(1919年)に制定された旧都市計画法において創設されました。都市の緑地保全に関する制度では日本最古のものだそうです。約100年も前から緑地保全に関心が持たれていたことに驚く方もいらっしゃるかもしれません。現在では、762地区・延べ170,096.9ヘクタールが風致地区に指定されています(225都市。平成28年3月31日現在)。
風致地区に指定されている土地の面積には幅があり、数ヘクタール程度のものから6,739.00ヘクタール(神戸市六甲山地区)のものまで様々です。
風致地区を理解するポイントは、指定された地区の風致を「維持」するのが目的であるということです。自然環境を生活に取り入れよう、住環境を向上させようというものではなく、現状を維持することに主眼が置かれています。一般には知名度が低いのはそのせいかもしれませんが、もし自宅の近くに緑が豊かな場所があったら、そこは風致地区かもしれません。
ちなみに風致地区の指定をするのは都道府県や市町村などの地方公共団体です。10ヘクタール以上であれば都道府県または政令市が、10ヘクタール未満であれば市町村(東京特別区を含む)が指定を行うことになっています。
建築には様々な制限が付加される
10ヘクタール以上の風致地区で次の行為をするときは知事(または政令市・中核市・特例市の長)の許可が必要になります(10ヘクタール未満の場合は市町村長の許可)。
  • 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
  • 建築物その他の工作物の新築、改築、増築または移転
  • 建築物その他の工作物の色彩の変更
  • 水面の埋立てまたは干拓
  • 木竹の伐採
  • 土石の類の採取
  • 屋外における土石、廃棄物または再生資源の堆積
  • その他、都市の風致の維持に影響を及ぼすおそれのあるものとして条例で定める行為
さらに、風致地区で建築物の新築・増改築をする場合は、建築基準法などによる制限に加えて、条例によって様々な制限が付加されることになります。
  • 建蔽率
  • 建築物の高さ
  • 敷地境界線から建築物外壁(またはこれに代わる柱の面)までの距離
  • 建築物の形態及び意匠、色彩など
建蔽率では20%までしか許可されていないケースもあります。東京などでは土地が20坪という住宅も珍しくありませんが、20坪であれば建坪が4坪になってしまうということです。都道府県の条例によって制限は異なるので、時には風致を重視する自治体や住民と地権者やデベロッパーなどが対立する場合があります。風致地区を購入する場合は規制内容をよく吟味し、必要であれば建築士にチェックしてもらうと良いでしょう。