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フラットフロア

あえて「平らな床」を求める理由とは
建築用語に「フラットフロア」というものがあります。初めて聞くと「フラットフロア(平らな床)? 床が平らなのは当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、これはバリアフリーの思想に基づいた用語。住戸の中の段差を極力なくそうとする考え方のことをフラットフロアと言います。
家庭内事故は居間が最も多い
一般的にバリアフリーと言えば高齢者向けの住宅が連想されますが、生活動線を考慮したり、家庭内事故を未然に防いだり、バリアフリー住宅は誰もが快適に暮らせる家でもあります。また、実は家庭内は意外と安全ではありません。家庭内における不慮の事故による死亡数は13,952件。同年の交通事故死5,646名の2倍以上多かったのです(2015年人口動態調査)。特に注目すべきは、家庭内で最も事故が起きている場所が居間であること(事故発生率35.5%。国民生活センターによる調査、1999年)。床で滑って転倒する、段差や出っ張りにつまずいて転倒する、置いてあるものにつまずいて転倒するといった事例が報告されていました。フラットフロアは、こういった事故を防ぐためのアイデアだと言えます。
あらゆる段差を極力小さくすることを目指す
フラットフロアは段差のない室内を目指す考え方です。居間だけでなく、玄関や浴室、和室の出入り口などの段差も極力小さくすることを目指します。住戸内の事故は階段のように大きな段差だけでなく、数センチの小さな段差で多く起きていますので、フラットフロアは住戸内の安全性を向上させることにつながります。「フルフラット設計」と表示される住宅設計の場合は、足元の段差をほぼすべて解消した仕様のことを指します。
ちなみに居間に次いで事故発生が多い場所は台所(22.7%)、階段(13.4%)、浴室(7.7%)と続いています。台所の事故はコンロの火や刃物などによるものです。階段では滑って転倒・転落したり、足元が暗くて転倒するケースがあります。滑り止めや手摺りを設置したり、照明器具で明るさを確保するなどの対処が必要になります。浴室では濡れた床で足が滑って転倒するケースがあります。床や浴槽に滑り止めマットを用意したり、手摺りを設置することで安全性が高まります。
玄関の上がり框(あがりがまち)やバルコニー出入り口などの段差はフルフラット設計であっても解決されないことがあります。段差が大きい場合は踏み台を設置すれば移動をしやすくすることができます。また、お年寄りはドアに挟まれることもあるので、油圧式のドアクローザー(ゆっくりと自動的に閉扉を行うことができる)を設置するのも有効です。