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競売物件のリスク(1/2ページ)

森田雅也森田雅也

2019/12/18

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イメージ/123RF

不動産投資を始めるにあたり、必要不可欠なものが投資物件になります。投資物件は、投資方法がインカムゲインやキャピタルゲインどちらの投資方法で行うにも必要不可欠となります。 投資物件は、通常の場合は相続などで承継しない限り、購入して用意することになります。

しかし、一概に購入といっても不動産なのでかなり高額になることが多く金融機関から融資を受けたり、貯金を崩したりすることになると思われます。

そこで、初期投資を抑える方法の一つとして、競売物件を落札するという方法があります。競売物件の場合には、通常の20%から40%ほど安く購入することができる可能性があるので、初期投資を抑えられます。

競売物件とは、裁判所が差し押さえて競売にかけた、債務を返済できなくなってしまった債務者の不動産のことです。落札された金額を債務に充当することによって債権者の満足が図られることになります。

たしかに競売を利用すると、不動産自体は通常の売買より安く購入できることがあります。しかし、よく調べないまま落札すると費用がかさみかえって損をしてしまうことがあります。

以下、競売特有の注意点をご説明します

①適用法律
通常の売買や不動産会社との取引で適用される法律は、「民法」、「宅地建物取引業法」等です。買主の保護の度合いが手厚いものになります。

これに対して、競売が規定されているのは、「民事執行法」という法律になります。
適用法律が違うために、「重要事項」などの説明を宅地建物取引士が行いません。したがって、競売物件について建築制限がある不動産なのかなども自分で調べる必要があります。

例えば、競売物件である建物をリノベーションして賃貸物件として貸出す予定で落札したが、都市計画法や建築基準法で建築制限があったがためにリノベーションすることができないといったリスクもあります。

②瑕疵担保の規定の適用
売買において購入した物件に瑕疵があると瑕疵担保責任を売主に問うことができ、損害賠償や契約の解除を行うことができます。

これに対して競売で落札した物件には、この瑕疵担保責任の規定が適用されません。したがって、落札した建物の雨漏りが激しく、とても住めるような建物ではなかったとしても、自費で直さなければなりません。

③内覧の可否
不動産会社を通して不動産を購入する場合には、通常所有者の許諾をもらっているので、内覧をすることができます。実際に建物の間取り、設備などを見て購入を決断される方が多いと思われます。

しかし、競売の場合は債務者の資産を裁判所が差し押さえているにとどまり、債務者(所有者)のプライバシー保護の観点から、中に立ち入ることができません。 したがって、競売において入札時点では内覧をしていない状況で入札金額を決定しなければなりません。

また、無事に落札したとしても現に人が住んでいる場合や、残置物がある場合において勝手に処分することはできず、引き渡し命令や、強制執行の手続きに則って明け渡しを求めることになります。

これらの手続きに関してもすべて自分で行う必要があり、かなりのお金と労力・時間を費やします。

インカムゲインを目的とした不動産購入の場合に、残置物や人が住んでいなかったとしても、クリーニング代にかなりの費用がかかることもあります。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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