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オーバーハング

下階よりも上階のほうが広い構造
オーバーハング(overhang)という言葉は、登山用語として知っている人が多いのではないでしょうか。岸壁の上のほうで突き出した岩、張り出した岩のことをオーバーハングと言います。ロッククライミングでは「傾斜角度が垂直以上になっている岩壁」のこと。当然、通常歩行では登れませんので、踏破するには特別な装備と技術・体力が必要になります。ボルダリングでは前傾斜、かぶりと呼ばれることもあります。
実は、建物に対してもオーバーハングという言葉を使うことがあります。簡単に言えば、下階よりも上階部分が張り出していること、下階よりも上階の方が広くなるような設計デザインのことです。
二段ベッドの下の段を取り除いたものをロフトベッドと言いますが、ロフトベッドは下に家具などを置くことによって狭いスペースを活用することができます。同じように、オーバーハングの下の部分は駐車場やテラスなどとして活用することができますし、上の部分は居住スペースやバルコニー、ウォークインクローゼットなどに使えます。オーバーハングは屋根の代わりにもなるため、雨に濡れずに車に乗ったりすることも可能です。
ただし、オーバーハングはキャンティレバー(cantilever。カンチレバーとも言う)という、片側だけが柱や壁に固定されている片持ち式の構造になっており、四本の柱で自立するロフトベッドとは基本構造が異なります。
地形の関係でオーバーハングを採り入れることもあります。都市部では土地面積が狭いことも多いため、特に住宅密集地では注目が集まっています。
オーバーハングのメリット・デメリット
スペース活用に威力を発揮するオーバーハングですが、弱点もあります。オーバーハングはキャンティレバーで成り立っているので、耐震性が問題になるのです。基本的には基礎や構造を強化したり、木造にRC造を組み合わせたり、RC造にすることで強度を確保します。最近では技術の進歩によって面積の広いオーバーハングも可能になっていると言います。
オーバーハングは見た目が不安定になりがちなので、見る者に不安を与えることもあります。一方で、見た目の不安定さは通常の建物とは異なるデザインにもつながります。強度や外観をしっかり考慮すればメリハリのあるユニークな建物を実現できるということです。 建築費用が抑えられるのもオーバーハングのメリットです。オーバーハングでは1階部分の面積が小さいので、基礎工事の規模も抑えられます。また、オーバーハングを前提に考えると狭小地も選択肢に入るので、土地探しの幅が広がります。