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あんこう

「あんこう」は雨樋の一種!?
日本古来の建材にはなかなか面白い名称のものが存在します。「あんこう」もその一つです。
あんこうとは、軒下に水平に設置される「軒樋(のきどい)」と、軒下から地面まで垂直に設置される「竪樋(たてどい)」をつなぐ部分のこと。「樋」とは雨樋のことで、屋根の雨水を集めて地上に導くための仕組みを指します。あんこうは魚の鮟鱇(アンコウ)のことで、上を向いてパックリ口を開けた雨樋の姿が吊された鮟鱇に似ているところから通称となりました。また、あんこうは「呼び樋(よびどい)」とも呼ばれています。上から落ちてくる水を呼び込む樋、というわけです。
元は軒に接続する受け口の枡をあんこうと呼んでいたそうですが、現在では軒樋と竪樋の接続部分全体を呼び樋と呼ぶことが多くなり、呼び樋の範囲まであんこうが意味する部位も広がったようです。
様々な生き物由来の建築用語
あんこう以外にも建材を生き物に見立てた用語はたくさんあります。ここではいくつかをピックアップして紹介します。

・蟻(あり)
蟻の足のような形状のもののことを言います。蟻の足先は扇状に爪が開いています。例えば木造建築の工事現場では、柱をつなぐ箇所に扇形の出っ張りがあるのを見たことがあるかもしれませんが、あれが蟻の足。接合部は「蟻継ぎ」、出っ張っている部分は「蟻ほぞ」と呼ばれたりします。逆に扇形の切り込みがあれば「蟻溝(ありみぞ)」です。他にも、断面に蟻の足がたくさん並んでいるような作りの外壁タイルを「蟻足タイル」と呼ぶこともあります。

・螻羽(ケラバ)
切妻屋根などの切妻部分で、妻側の壁より突き出した端の部分をケラバと言いますが、漢字では「螻羽」と書きます。螻(けら)とはいわゆるオケラのこと。「ミミズだーって、オケラだーって、アメンボだーって♪」という歌のあのオケラです。このオケラの羽根の部分に屋根の端の形状が似ているためにケラバと呼ばれるようになったそうです。

・犬釘(いぬくぎ)
これは建築用語というより鉄道用語なのですが、釘の一種であることに変わりはありません。通常の釘は頭が平らになっていますが、犬釘の頭は垂れ耳の犬の頭のような形状をしています。用途は鉄道のレールを枕木に固定すること。対象物を押さえる部分が犬の鼻、釘を引き抜くための突起の部分が垂れ耳に見えます。釘本体は回り止めのために丸棒ではなく、四角い形状をしています。元々は犬の頭型であったこの枕木釘は、後に頭が半球状のものに変わっていきました。木製枕木が減っている現在ではあまり使われなくなっていますが、鉄道ファンの間では人気があるのだとか。